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ぼくには親父はいないから介護は楽させてもおうと思う

小学校2年。半日の授業が終わって家に帰る。

アパートの前には一台のタクシーが停まっていて。助手席には意を決した母がハンドバックを握りしめて少し浅めに座っている。
後部座席にはふたつ上の兄ちゃんが見えて、大泣きしているように見える。

なんのことかわからなかったが、いや、うすうす分かってはいたのか。ぼくは小走りでタクシーに駆け寄る。

「乗って」と母親に言われ、駄々をこねるわけでもなくタクシーに乗った。

母親の指示ででタクシーは走り出し、二度とそのアパートに訪れることはなかった。

アパートに父親を置き去りにした。

ぼく、兄、母の3人家族は、いとこのおばさんの家にかくまってもらうことになった。

ぼくと兄ちゃんは、それ以降父親に会ったことはない。

ぼくと兄ちゃんも、父親に会いたいと思ったことはない。

父親は酷かったから。ろくでもなくて、母親を殴る。ぼくらも悲しい思いをたくさん持たされたし。

母親は、子供を守りたい一心だった。

ぼくらは母子家庭だ。

その後、兄が引きこもって地獄の第二幕が幕開けするのだけど、まぁそれはそれで。そんなことはどんどんネタにしてやろうと思っている。

これらのことは、母親の介護のことに強く影響している。ぼくが介護の仕事をしている理由もここにあると思う。

さて、親父はほんとうにどうしているのか知らない。おそらくもうそろそろ後期高齢者に差し掛かるころだと思う。

母親と離婚した後、すぐに再婚したのは風の噂で聞いた。本当にそれっきりで。

母親と子供を急に失って、その衝撃と悲しみでその後の人生を真っ当に生きていてくれていればそれでいい。

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