【介護エッセイ】木の棒に嫉妬と不甲斐なさ
指先の震えを止めるために、両手の指を「グー・パー・グー・パー」と動かしている。
午前中の体操が終わり、今はしばし団欒の時間。それなのに、その利用者さんはひとり「グー・パー・グー・パー」と指先の体操を続けている。
パーキンソン病からくる手先の震え、振戦(しんせん)を抑えるためだ。
「自分で着替えができなくなると、娘にいろいろ言われるからなぁ。だからこうして手を動かしておかないと、動かなくなってしまうからなぁ」
そう言ってひとり、皆が集まるデイサービスのフロアで黙々とリハビリを頑張っているのだ。
隣に座っている利用者さんは不思議そうにしている。ひとりじゃんけんに見えてもおかしくない。
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