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オアシスのない砂漠にて

「もうだめだ。苦しい。もう直ぐだな。俺は」

そう言ってベットにずっと横たわっている。デイサービスにきた時からそんな感じだ。結局、午前中はベットの上で過ごした。

ずっと寝ていてはデイサービスに来た意味が薄れてしまう。夕方、家に帰ってから寝れなくなるとご家族の介護負担も増えるし、本人も昼夜逆転してしまって生活のリズムが崩れてきてしまう。

分かっては、いるんだが。

人工透析と脳梗塞からくる後遺症。短期記憶が途切れることがある。水分制限があってデイサービスで摂取できる水分は400ccと決められている。思うように水も飲めない。
室内にいてもまだまだ蒸し暑いこの時期。オアシスのない砂漠に放り出されたら、ぼくは平常心を保っていられるだろうか。
その方と同じようにベットに横たわり、一滴の水分も無駄にしないようするだろう。

だから軽はずみに「いつまで寝てんの!起きなさい!」なんて、肝っ玉母ちゃんみたいなことは言えないのだ。

とはいえ。とはいえ、ちょっと絡んでみる。

ぼくはベットの縁にちょこんと座る。

「しんどいっすかねぇ」

「もうな、しんどい。だめだぁ」

気さくな方で笑顔が素敵なダンディーなので、ぼくはその方が好きだ。

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