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介護劇場

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高齢者が主人公。振り回されるぼく。介護・介護現場ので起こる出来事をおかしく描写して感じたことを綴っています。
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#介護士

先週まで元気だったのに

急に体力が落ちる。 先週まで元気だったのに、今日会ったらずっとベットの上だ。 目はうつろ…

たとえるなら

ドリフトしないと曲がれそうにない腰 絶望の時に時が止まったかのような顔 水を抜き切った豆…

ぽとり、うんち。

椅子から抱え上げた瞬間、その人の体が少し軽くなったような気がした。 気がしただけかと思い…

病気に意味があるわけでなく、その人に意味がある

「この病気になったのは意味があると思うから」 映画の中のセリフではなく、今日直接耳にした…

「元気ですか?」なんて、

「元気ですか?」なんて、声はかけられない。 相手はずっと変わることのない景色を眺め、ベッ…

ヤドカリ

歩いては止まり、止まっては歩く。 左右の足をバタつかせて、トコトコ・トコトコ。赤子のハイ…

膝折れ間際の攻防

「いたぁーーーい!」 「もういいぃぃーーー!!」 トイレの奥から怒号が聞こえてくる。いや、断末魔のようでもある。 その声量で仕切りのビニールカーテンが少し揺れただろうか。 ぼくはそれほど驚かないし、たじろいだりもしない。何度も聞いているし、介助している当事者じゃないからだ。ただの介護施設清掃員。しかし過去に介護経験のある身、その状況を他人事とは思えない。野次馬のようにおそるおそる近づいてみよう。 トイレでは、介助者と介護士の攻防が続いている。 手すりを掴んで立っている

相槌の右ストレート

浴室に座り鏡の前でファイティングポーズをとって見せてくれた。 鏡に映った自分の顎に左ジャ…

のこった記憶

その人は、ぼくの顔を見るなり不適な笑みを浮かべて口をひらく。 「あいつが来る」「あいつに…

床に落ちた髪の毛と剥がれた皮膚と

介護施設で掃除の仕事をさせてもらっている。 介護職員とし介助している施設とは別に、もう一…

その人の背景と文脈

この人は、何があって認知症になったのだろう。 そう思うことは自然な思考だ。 もちろん介護…

笑顔と笑い声を届けよう

認知症高齢者の方とのコミュニケーションは、なかなか一筋縄ではいかない。 言葉による意思の…

転んでも、缶ビールを買いに行く

自分が勤めているデイサービス利用者さんを近所でよく見かける。 その人はトボトボとした歩き…

もぬけの殻のベット

え?!Kさん!どこにいった! いつもの部屋にKさんがいない。そこにベットはあるものの、シーツや枕、掛け布団やクッションはなく、もぬけの殻だった。 一瞬、最悪がよぎった。確かにKさんは最近徐々に元気がなくなってきていた。 Kさんは、一日中ベットに横たわっている生活。調子の悪い時は点滴を受けている。僕がKさんの部屋を掃除しにいく時は、起きてはいるものの目線を合わせるだけで言葉を交わすこともなくなっていた。体力が乏しくほとんど話すことができないのだ。 僕は施設内の部屋を掃除し