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もぬけの殻のベット

え?!Kさん!どこにいった!

いつもの部屋にKさんがいない。そこにベットはあるものの、シーツや枕、掛け布団やクッションはなく、もぬけの殻だった。

一瞬、最悪がよぎった。確かにKさんは最近徐々に元気がなくなってきていた。
Kさんは、一日中ベットに横たわっている生活。調子の悪い時は点滴を受けている。僕がKさんの部屋を掃除しにいく時は、起きてはいるものの目線を合わせるだけで言葉を交わすこともなくなっていた。体力が乏しくほとんど話すことができないのだ。

僕は施設内の部屋を掃除して周る清掃員だ。2階建の介護施設を巡回し居室を清掃していく。
居室は4人1組の多床型。カーテンで仕切られた空間に可動式のベットが4つ設置してある。衣類が収納できる5段くらいのタンス、背丈ほどの高さがあるクローゼットが備え付けてある。

Kさんの部屋だった空間にKさんの生活した痕跡はなくなっていた。僕はKさんの部屋だった空間を後にし、心臓が縮まる感覚を堪えながら次の部屋へと掃除へ向かった。

なんてことはない。となりの部屋にKさんはいた。部屋を移動しただけだった。身体状況が変わった時や新しく入居があった時、同居人と相性が合わない時など、部屋の移動はよくあることなのだ。

どうしてこれくらいのことで動揺するのか。それはそのまま会えない人になってしまったことが幾度となくあるからだ。
容態は急変する。ドラマではなく介護現場はリアルだ。

Kさんは僕にとって心の通じ合った人だと感じたんだ。だから胸が苦しくなった。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。