
皓
それがひかりだというから
そこはもう埋め尽くされ
やはりそこには自分の影すら映らないのに
白い埃が散る
しろいゆきのへやに しろいおんなのとりが、ほそりとしたすがたで
篝火を隠していたのです、ただ唇があかい実を咥えているのを、未
来に懐いました。枝葉が枯れたあとの要脈だけの、太い幹に 欠陥が
零れているので、折れた翼や 剥がれた川で、わたくしの夕暮れは、
ひたひたと雪がれていく、あゝ盲信なんだよ。
皓い誇りが舞う
これら惰性で生きているのともちがう、多分
こうなるだろうという培われてきた人生観を
漠然とした安堵で埋める、
このしわくちゃな
もの。渇いているのだろうが、それがなんで
あるのか見ようとしない 知ろうとしない、
わかりたくない、
生きていけるから困らない、
だからなんとなく流されてみる、
わたしのこと
をわたしのことして 見ようとしない、
あなたをあなたとして
考えない。そこにあることだけを
なんとなく 選んでいる
闇路にある圧力が もっとも 細分可した土砂崩れみたいな装丁で、
せいぜい樹海にかえってきた夜は 際限なく降る小池を逆さに抱えた
メタセコイアの未来は、手袋が重なりあう微熱に 温床張りに顰む教本で
こんなにも 或るというのに言い尽くせない
重なり合う影も形もなにひとつ持てやしない
僕らのユリイカ、アスファルトに垂れ流した糞尿が乾いたわらいだ
僕らは子供ではないけど、暈物語を編み続けて久しい阿呆のひとつだ
すがすがしくあまく 明けては鳴らない空は なでやかに帆翔する
こう 落ち着く世な薄い銀幕 陽翠の奥、なにもない野に辷らせる
そういうものが あたまんなかに渦をまく
今夜も眠れなくて徘徊する 片腕だけが欲
灯りひらめくのだから 山道を急ぎ さ迷うことに
こちらを見るなと明い舌も やおら無口な雪肌を
基軸のノブがひやりとしたが、止むこともなく
騒ぎ立てる無明。オルゴールの余に滑落していった、全部
音もなくシャワーのような洞然だ。頃く
これ以上ないところまで、あおいほのおが尾を噴いて
退屈もやりきれず
「燐と寸を失くしちまえばよいんだよ。」
芝居ががってやりこめる。
守宮が鳴くのだと、かがやきばかりで 憎たらしい
多分一生を何も無いところから一閃としてちびた鉛筆でひいたとき
私の姿は 木菌魚影となる
踏み込んだ脱衣所で やわらかな生死質量を測る、眼球幸彩によって
――熨せられるのなら
誰かの物差しの中でだけ 吐息を
ゆらかしてあるだろうと しんぜませ、
(だから、ね。)ただ ほかかりゆさへ
とうとうと、決して 見るのです。
(花も咲かずに枝葉も枯れず、誰がなにをしておりましょうか、)
酒をしこたま飲んだあとでは、螺鈿の箱庭は、春にも冬にもなりません。
陰りが過る、こなれた虫の音が背に腹に うねりそらせた
こうして終着駅に透るわたくしが ぽつんと他愛もなく おちてきたものだった
両手とは 天秤を拵え 瞼が 眠っている
いつだってそうだ 私達は形を探しているわけではない
凡て過去を引きずり出しているだけの ただの投影
2023-07-10 B-REVIEW投稿
https://www.breview.org/keijiban/?id=11335