こどもとあそぶ。ことばであそぶ。〜⑰手元におもちゃがないときどうする?〜
お手軽で最強のことば遊びはアレ!
前回投稿はこちら
遊びに困ったらクイズはいかが?
「遊び方」をテーマにお送りしているこのシリーズ。おままごとや絵本や魚釣りなどなど、いろんな遊びを紹介してきましたが、どれもお道具がいるものばかり。
「手元に何もないときはどうすればいい?」
はい、そんなときはクイズを出し合ってみるのはいかがでしょう?
「クイズって、そんなすぐに問題なんて思いつかないよ」と思われるかもしれませんが、そこまで複雑なものでなくていいです。大人が周りを見て、目につくものをクイズにしてみます。
たとえば今、車を運転しているとしましょう。見えるものはなんですか?
「赤と黄色と青のランプがついた、道路に立っているもの、なーんだ?」
「24時間開いていて、お菓子やおにぎりや飲み物や絆創膏も売っているお店はなーんだ?」
「怪我人や病人を運んでくれる車はなーんだ?」
ほら、即席クイズの完成です。年中や年長さんくらいなら、子どもに問題を作ってもらうこともできると思います。
道具を使うならダイソーの知育カードやあいうえおカードがオススメ
ダイソーにある知育カード。「しごとカード」は、職業とそれにまつわる道具が、クッキングカードは食べ物とその素材が描かれた2枚組になっています。
一般常識が学べたり学習意欲を高めたりと、お役立ちなカードではありますが、カード系の課題に拒否感があったり退屈してしまったりという子には、クイズやカルタ方式で遊びながら学んでもらっています。問題を出すのに苦労するという場合はこうしたものもお勧めです。
そして、またまた登場のあいうえおカードで、前にも紹介したなぞなぞかるたも面白いですよ。
説明力から見えてくることばや認知の発達
クイズという遊びが育てる子どもの能力には、語彙力や理解力などいろいろありますが、私が最も注目するのは説明力です。対象物をことばでどれだけ伝えられるかは、子どものことばの発達を把握する上でとても大事だと考えます。また、ことばだけでなく認知機能の発達についてもみています。
たとえば「消防車と救急車の違いはなんですか?」と聞かれたとき。多くの大人は「消防車は火事を消してくれ、救急車は怪我人や病人を運んでくれます」と答えるでしょう。
しかし、これを幼稚園・保育園に通っている子に聞くと、「色が違う」「音が違う」と答えることがしばしばあります。
この子の答えは間違っているでしょうか? いいえ、間違いなく消防車と救急車では、色もサイレンの音も違います。けれどこれが仮にテストの問題なら、この子は丸をもらえないでしょう。
大人の答えと子どもの答えの、いったい何が違うのか。それは、大人は用途という特徴について答えており、子どもは外観の特徴について答えているという点です。なぜこのような思考の違いが生まれるのかというと、大人は質問の意図が外観についてでなく用途について聞いているのだと判断できているから。対して子どもは、質問の本来の意図までまだ読み取れていません。
このような違いは他のクイズでもよくみられます。ダイソーのあいうえおカードに出てくるもので例をあげてみます。
たとえば猫。
大人「動物の仲間で、ニャーとなきます」
子ども「茶色で、しっぽが長くて…」 注)ダイソーのイラストは茶トラでしっぽが長い
たとえばおにぎり
大人「食べ物の仲間で、ごはんを握って作ります。中に具が入っているものもあります」
子ども「三角の形で、のりがあります」 注)ダイソーのイラストはのりのついた三角おにぎり
上記の例も、子どもたちの説明が間違っているわけではありません。ですが、大人はイラストがその事物を代表する一例にすぎないということを知っており、目の前のイラストにはとらわれず一般的な視点から説明をしています。ネコにはいろいろな色があり、おにぎりの形も様々です。対して子どもは目の前にあるイラストそのものを説明することに終始しています。
このように質問の意図を読み取り、一般的な視点で答えられるようになるのは、未就学のうちはまだ難しく、小学生になってからと言われています。ですので私たちは子どもの答えを不正解とはせず、一般的な視点へと誘導するために「なんの仲間? なんて鳴くの? どこで食べた?」など質問返しをして、子どもに答えてもらっています。
おうちで挑戦される場合も、「それはイラストの説明よ」と目くじらを立てたりせず、さりげなく再質問をしながら、子どもたちの「もっとやりたい!」を引き出してみてください。そうした積み重ねの先に、より一般的な視点を身につける能力が育ちます。