ぐるぐるぐるぐる
息子が「ぐるぐるぐるぐる」と言いながら、お絵描きしていたり、何かをかき混ぜたりしていると、ついつい「グルコサミン♪」と続けてしまう私と夫。何も考えなくても口をついて出てしまうくらい、あの世田谷育ちのサプリのCMソングはすっかり耳に染みついてしまっている。
普段あまりテレビを見ない私たちでさえそうなのだから、きっと今の親世代以上は皆そうなんじゃないだろうか(案外うちだけだったりして)。
最近は耳に入った言葉は何でもリピートするようになった息子。「グルコサミン」も、まだきれいに発音はできないものの、それに近い言葉を発するようになり、ぐるぐるぐるぐるからの一連の流れが彼の中で定着する日も近いと思われる。
ふと、これって自分の親や祖父母世代が会話の中でちょいちょい放り込んできた「あたり前田のクラッカー」や「しまったしまった島倉千代子」、「こまったこまったこまどり姉妹」とまったく同じノリじゃないか、と思い当たった(「しまったしまった……」と「こまったこまった……」は吉本新喜劇の島木譲二さんのネタだったようなので、関西限定のノリかもしれないが)。
前田のクラッカーを食べたことも見たこともなく、島倉千代子ご本人よりコロッケさんの『人生いろいろ』の方がまだ馴染みがあった自分としては、それらのフレーズの面白みはまるで理解できず、年寄りくささと昭和の香りをぼんやりと感じながら聞き流していたものだ(コロッケさんのものまねに親しんでいる時点で自分も十分昭和やろ、というのはおいといて)。
その、自分が受け取っていたのと同じ雰囲気やバイブスみたいなものを、息子も「ぐるぐるぐるぐるグルコサミン」に感じることになるのかもしれないな、とふと思ったのだ。大人になって死語特集的なものでひょっこり出くわすことがあれば、あぁうちの親も昔しつこく言ってたな、平成くさいと思ってたな、などと思い出すことになるのかもしれない。
最近テレビをつけるのは、もはやEテレか録画した番組を観るときくらいなので、ここ数年テレビCMをきちんと観た記憶がない。そのため、今もキャッチーなCMソングやフレーズが日々流れているはずだが、自分の中ではおそらくグルコサミンを最後に、アップデートが止まってしまっている。
観たいものだけを選んで観ることが当たり前になっているサブスク世代の若者たちだって、テレビCMに接する機会はほとんどなくなっているはず。もちろんCMに限らず、「あたり前田の……」的な、出だしを聞いたら続きを言わずにはいられないようなフレーズに出会う機会はあるかもしれないが、皆それぞれ違うものを観ているということは、それが同世代であまねく共有されるということにはならず、結果的に「同世代なら誰もが知っているアレ」みたいなものは、これからどんどんなくなっていくのではないだろうか。
そう考えると、我が家でも今まさに繰り広げられている、昔流行ったフレーズをそれを知らない世代の前でしつこく繰り返すある意味ハラスメント的な行為も、私の世代で終わりになるのかもしれないな、なんて思ったり。喜ばしいような、ちょっと寂しいような。