詩 『星の街』 (2023) 【朗読あり】
星の街
繁華街のぎらぎらしたネオンも昼間は身を隠しているから、雑踏の只中でもどこか心許なく、そうして星を待つのがわたしたちだ。地上に生えた、めらめらした揺らぎは太陽の下で皮膚の内側に宿ります、浸潤して、血管を巡って、排気ガスを吐くようにやがては人から人へ循環する、触れ合った肩だって冷たい、かもしれないので、不純物を箱に詰めた祝福の、呪い、それが、てらてらとかがやいて見えるのは色眼鏡のお陰でした、ネオンを回遊する魚たちの目はそれでも強すぎる太陽光で白内障かもしれなかったと、六百三十四メートルの高い高い塔を見上げて、三並びの赤い老人が呟いた。「適切な距離を以ってして隣り合ってください」 地の底からアナウンスが響き、いくつもの子宮をこじ開けようとしている、女たちは脚を早め、男たちは立ち止まり、老人たちが空を見上げた、みなが一様に、明日は何を食べようかと考えている。
繁華街のぎらぎらしたネオンも昼間は息を潜めているから、雑踏の只中でもどこか安心して、星なんて忘れてしまうのがわたしたちだ。足早に追い越してゆく背中にも舌打ちにもヘッドホンひとつで耐えられてしまう、地球は今日もまるい、飛び込んだカフェの名物メニュー(と、あとから知った)山盛りのナポリタンと格闘する、昨日の行き先を知らない、産むこともできないのにお腹が膨れている、それが毎日だから氏神さまに詣でる、二拝二拍手一拝、誰かの隣を歩いている、都会、俯瞰(視点が飛び立つ)、不感(感じない)、不完(何かがいつも足りない)、不快(ではない)、慣れすぎた、足並みを揃えて、瞬いている。
2023.01.19
ツイキャスイベント
『ジュラ詩ック・パーク Rec18』にて朗読
(出番は1:08くらい〜ですが、皆さんとても実力ある素晴らしい方ばかりなので、是非通して聴いていただけたら…!)