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中日新聞月1連載「ほぉ~ワード」に込めた思い

始動

2019年初夏、当時の校閲部長からのオーダーは次のようなものだった。

「子ども向け」「ことばに関するもの」「ちょっと研究してみて」「試作品を書いてくれるとか

のちに「ほぉ~ワード」と名前がつく、中日新聞名古屋本社校閲部が受け持つ教育面の月1コーナーの始まりだった。校閲記者が受け持つ欄として、どんな企画ができるのか。もう一人の部員と検討に入った。

既に大手新聞社には校閲部が受け持つコーナーがある。ある程度同じような内容になってしまうのは避けられないとしても、中日新聞の読者の方に自分たちが何を届けられるのか。二人で意見を出し合った。


提案

小中学生に読んでもらうには身近な言葉を取り上げるのがいいだろう、読んでもらうだけではなく「参加型」のコーナーがいいのでは、読者との「双方向性」を持たせられないか。月1とはいえ連載なので何か一つ大きな幹となるテーマがあった方がよいのでは、いやいや月1だからあまりとらわれることなく書いてよいのでは。

あれこれ意見は出る一方で、本業の校閲業務に支障が出ないようにもしないといけない。あまり身の丈に合わないことを始めて破綻してしまってもいけない。

この日を含め何度か話し合い、検討の結果行きついたのが
【案1】語源
【案2】間違い探し
【案3】質問コーナー
【案4】中日ボイス(インターネットを使った読者を中心とするアンケート)で言葉の使用分布調査=方言地図

コーナーの核となるテーマは定めた方がよいだろうと、「語源」を第一候補に。子どもでも日常会話で使う言葉の中から、意外な語源を持つものをピックアップして紹介してはどうだろう。たまには語源にゆかりのある土地を訪ねて取材してもいいかもしれない。
もう一つの候補が「間違い探し」。他社にもあるが、やはり校閲を体験し、知って、言葉に関心を持ってもらうにはこれが一番だ。
「質問コーナー」は何かと”正解”のない言葉の問いに正面から向き合える技量が自分たちにあるのか、日常業務として対応できるのか懸念はあったが案の一つに残した。
中日ボイスは双方向性があり地域性も生かせるため他社にはない優位な面がある。だがこの時点では紙面でどの程度アンケート結果を表現できるのか具体的な想像ができず、”子ども向け”のオーダーに対応できるのかという不安もあった。

サンプル原稿を書いて案を提示し、反応を待った。


決定

返ってきたのは「東京校閲が出した本の感じで」。

東京本社校閲部が東京新聞に連載したコラムなどをまとめた本がちょうど出版されたころだった。

月1回ということもあり、テーマも一つに定めなくてもよいのではということに。結果、東京の本のように言葉についてあれこれ書いていこうということになった。

ただそれだけではいかにも二番煎じ。何かオリジナリティーを加えられないか。そこで思いついたのが「間違い探し」との合体だった。普通にコラムを書くのだけれど、その中に1カ所だけ”間違い”を忍ばせる。そうすれば一つのコーナーで二つの楽しみ方をしてもらえるのではないか。また、最後まで読んでもらえる効果も期待できるのではと考えた。消えたと思われた案をよりよい形で復活させることができた。

このころには仲間も増えた。あくまで本業の校閲業務の合間に作業することになるのでメンバーは公募とし、今では11人の有志で回している。


命名

さてコーナーのタイトルをどうするか。いろいろ考えてはみるが、これといったものが思い浮かばない。こういうとき、的確で時にウィットに富んだ見出しを毎日毎日素早く付ける整理記者の皆さんはホントにすごいと思わされる。

「ほぉ~ワード」の名付け親は現校閲部長(整理記者出身)。少しでも「ほぉ~」と思ってもらえる言葉を取り上げようというコーナーコンセプトと、よくサッカーのゴールキーパーに例えられる校閲記者が月に1度フォワードのように前面に出て筆を執ることにかけたネーミング。名前に込めた思いは初回の紙面でも紹介した。

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タイトル案を記した当時のメモ


掲載

2020年1月。第1回掲載。

1年間は連載を軌道に乗せることを大切に、あまり奇をてらわず続けることを心掛けた。内容は中学生ぐらいでも読んでもらえるようにと気を付けてはいるが、これがなかなか難しい。また、筆者おのおの面白そうと思った言葉をチョイスするが、それが果たして多くの読者の興味に合致しているのかと思うこともある。

筆者の個人的な興味が大多数の人の興味とあまりにも懸け離れていてはまずいだろう。メンバー間でも折に触れ話し合ってはいるが、このあたりは一人一人普段の生活の中で多様な人と触れ合い、読書、映画、その他いろんな言語活動を通して得た幅広い感覚を持ち寄ることが大切だと思っている。

そして最も大事なのは名前にも込められた「ほぉ~」。読者の方にそう感じてもらえるか。この原点を忘れては駄目だと自らに言い聞かせている。


変化

何とか1年が過ぎ2年目を迎えるにあたり、欲が出てくる。ちょっと変化をつけられないか。何か面白いことができないか。

いったんは仕舞い込んだものの、ずっと懐に持ち続けていた案を引っ張り出してみた。

=下に続く。下はこちら

この記事を書いたのは
上田 貴士
2006年入社、名古屋本社校閲部。11年北陸本社校閲課。13年名古屋本社校閲部。現在はニュース面を担当。最近お気に入りのお菓子は越後製菓の「ふんわり名人 きなこ餅」。