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校閲クロスワード2~外来語編~

前回の校閲クロスワードに引き続き、普段の校閲業務で使用している共同通信社の記者ハンドブック(第14版)を基にして、クロスワードパズルを自作してみました。
前回のクロスワードパズルがどんなだったかおさらいしたい方は、すぐ下のリンクからどうぞ☟


今回のテーマは

今回のクロスワードパズルのテーマは外来語です。
記者ハンドブックの741ページから「外来語の書き方、用例」の章があり、中日新聞校閲部では、これを基に新聞記事中の外来語の表記をチェックしています。

そもそも外来語とは何でしょうか?
記者ハンドブックでは以下のように書かれています。

外来語とは、元は外国語だが、日本語として使われるようになった語をいう。外来語には次のものも含まれる。
(1)元の外国語と大きく異なる表記が固定化したもの
例:コーヒー、スタジオ、セーター、ハンカチ、ラジオ
(2)新たに吸収され、外国語の趣を多分にとどめているもの
例:アイデンティティー、エクササイズ
(3)和製英語
例:アフターサービス、ナイター、ベースアップ

共同通信社記者ハンドブック第14版


記事に出てくる外来語は、例外もありますが記者ハンドブックで決められた表記に従って書かれています。これは、同じ意味の言葉に対して異なる表記が混在している状態―いわゆる表記揺れを防ぐためです。
表記揺れは、新聞記事を読んでいる人に違和感や混乱を生じさせ、記事に書かれていることの信頼性を危うくします。

今回のクロスワードパズルでは、そういった表記の揺れが起きやすい外来語のキーワードをなるべく詰め込んでみました。一部、日本語のキーワードもあります。

記者ハンドブックが手元になくても解けますので、挑戦してみてください。
記者ハンドブックがどんなものか気になった方は、大きな書店では在庫があることもあるので、実際に手に取ってみてはどうでしょうか。

問題編

クロスワードパズルの問題用紙をダウンロードできます。
印刷して、ぜひ挑戦してみてください。


これより下は解答・解説編です。
クロスワードパズルを解き終わってから読んでみてください。




















解答編 



A~Fを並べてできる言葉は
アカエンピツ(赤鉛筆)
でした。


解説編

ここからは、クロスワードパズルのキーワードとなった言葉で、外来語の表記について解説します。あくまで、新聞記事上の表記のルールであって、絶対にこの表記が正解というわけではありません。一部、個人的な見解も含まれていますのでご容赦ください。

タテのカギ

1 バイアス
スペルは英語「bias」
表記揺れ例:バイヤス

記者ハンドブックでは以下のように表記のルールが示されています。

イ列、エ列の音の次の「ア」は「ヤ」と書かずに「ア」と書くのを本則とする。

共同通信社記者ハンドブック第14版


他にも例として「ウエア」(×ウエヤ)や「スペア」(×スペヤ)などが挙げられています。
ルールの例外もあり、「カシミヤ」(×カシミア)や「タイヤ」(×タイア)などがあります。
ルールに従う外来語、従わない外来語があるので、表記に悩んだら記者ハンドブックの用例集で載っていないか探してみましょう。


2 リンク
スペルは英語「rink」(スケート場)、「link」(連結)

英語ではスペルがそれぞれ違って、それぞれ違うものを指しますが、カタカナで表記するとどちらも「リンク」になります。


3 アクセサリー
スペルは英語「accessory」
表記揺れ例:アクセサリ

原語の語尾の -y は、原則として長音符号「ー」で表す。

共同通信社記者ハンドブック第14版

他にも例として「マホガニー」(×マホガニ)や「レパートリー」(×レパートリ)が挙げられています。
例外もあり、「アムネスティ」(×アムネスティー)や「サンクチュアリ」(×サンクチュアリー)があります。

4 リア
スペルは英語「rear」
表記揺れ例:リヤ、リアー

これはタテのカギ1「バイアス」と同じルールです。
ちなみに、ハンドブックのルールでは、自転車の後部に連結して荷物を運ぶ二輪車のことは、「リヤカー」(和製英語rear car)と「ヤ」を使います。
日本でいうリヤカーは英語では「a bicycle-drawn cart」や「a bicycle trailer」と言います。

5 クリア
スペルは英語「clear」
表記揺れ例:クリヤー、クリアー

原語(特に英語)の語尾の -er、-or、-ar などは、長音符号「ー」で表すのを原則とする。

共同通信社記者ハンドブック第14版

クリアはルールの例外です。
ルールに従った例として「インジケーター」(×インジケータ)や「オブザーバー」(×オブザーバ)などが挙げられています。
例外として、「エンジニア」(×エンジニアー)や「ギア」(×ギアー)があります。

また、これもタテのカギ1「バイアス」と同じルールで「ヤ」ではなく「ア」を使っていますね。

7 カリスマ
スペルはドイツ語「Charisma」

外来語の中には、英語由来ではないものもあります。
どこの言語由来なのかは、辞書を引くと書いてあることが多いです。

9 スイートピー
スペルは英語「sweet pea」
表記揺れ例:スイトピー

12 エスニック
スペルは英語「ethnic」

13 リプレー
スペルは英語「replay」
表記揺れ例:リプレイ

15 スツール
スペルは英語「stool」

長音は、長音符号「ー」で表し、母音字を重ねたり、「ウ」を用いたりしない。

共同通信社記者ハンドブック第14版

他にも例として「アーティスト」や「インストール」などが挙げられています。

ヨコのカギ

1 バリアフリー
スペルは英語「barrier free」
表記揺れ例:バリアーフリー、バリヤフリー

タテのカギ1「バイアス」などと同じ表記のルールが適用されています。
また、記者ハンドブックの表記のルールでは「バリア」単体で使う場合は、「バリアー」と音引きが必要な表記となります。

6 インク
スペルは英語「ink」

新聞表記では、同じ「ink」でも、「インク」(筆記用)、「インキ」(印刷業界)で使い分けることになっています。

8 アクセス
スペルは英語「access」

10 エリア
スペルは英語「area」
表記揺れ例:エリヤ、エリアー

タテのカギ1「バイアス」などと同じ表記のルールが適用されています。

11 サイエンス
スペルは英語「science」

13 リリース
スペルは英語「release」

問題文の「キャッチ・アンド・リリース」も新聞上の表記のルールに従っています。

3語以上からなる複合語には、原則として語間に中点「・」を付ける。ただし、それぞれの語の独立性が希薄で、判読に困難がない場合には中点を省略してもよい。

共同通信社記者ハンドブック第14版

14 マス
スペルは英語「mass」

マスコミはマスコミュニケーションを縮めた言葉です。

外来語の短縮は固定化したものに限る。

共同通信社記者ハンドブック第14版

新聞の記事では読みやすいことや伝わりやすいことが大事なので、あまり世間に浸透していない短縮語は使いません。
他にも使用する例として「インフレ(インフレーション)」や「パソコン(パーソナルコンピューター)」などが挙げられています。

16 スプートニク
スペルはロシア語「Sputnik」

日本語にすると、衛星や同行者の意味です。

18 ピッチャー
スペルは英語「pitcher」

20 ノーメーク
和製英語。英語では「no makeup」や「without makeup」と言います。


あとがき


クロスワードパズルを解くことで、新聞記事上の外来語の表記に関心を持ってもらえたらなと思いながら、制作しました。
もっと外来語の表記について知りたいと思ったら、以下のリンクの記事も参照してみてください。