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自閉症のこだわりとどう付き合うか

自閉症のお子さんの「こだわり」とのお付き合い、
ときに大変なものだと思います。

不思議なこだわりにも2種類あると思います。

ひとつは「ある日突然生まれた行動様式」です。
「ある日通るルートを決め始め、道を逸れると癇癪を起こすようになった」
「突然日が暮れるまで公園から離れないようになった」などが、
それに当たります。

もうひとつは「日々の積み重ねで生まれた行動様式です。
「お気に入りの服があり、それしか着ない」
「毎朝1時間のお決まりルーティーンがある」などの、
日々の状況の中からなんとなく生まれた行動への変更拒否です。

どちらにせよ、
いつも私は考えます。

なんでこだわってんのかなぁと。

癇癪を伴うほどのこだわりであれば、
本人にはそうでないといけない理由があると思うからです。


こだわりの理由を分析的に考えてみる

◇ある日突然生まれたこだわりについて
このこだわりが始まるには、
特定のエピソードがあったと思います。

多くの場合は楽しいエピソードだったのではないでしょうか。

「お友だちといっぱい遊んだ」
「思いがけずおうちの人といっぱい遊んだ」
「いつもよりゆったりと遊びに付き合ってもらえた」
などです。

これは大人にとってはあくまでイレギュラー。
でもお子さんからすれば、レギュラーであって欲しい。

こうした思いそのものは、
自閉症でなくても共通ですよね。

私だって毎日が夏休みだったらいいなぁと、
常々思っています(笑)

ことばで表現できたら、
「この間のアレが楽しかった」
「また行きたいな」と、
思いをシェアできるのでしょう。

ただ、
こうしたこだわりを強く持つ子の多くは、
ことばでの表現には未熟がありますよね。

突如生まれた新しい行動様式は、
また遊びたいという思いの現れなのかもしれません。
あるいは楽しかった思い出を味わっているのかもしれません。

これに対して「こだわり崩し」ありきの対応をしてしまうと、
なんだかやるせない気持ちになりますよね。

しかも「やるせない」なんて表現も、
やっぱり難しいのです。
(これは大人でもそうだと思いますが・・・)

「楽しかったよね」
「また遊ぼうね」と、
共感してもらえれば少し落ち着くかもしれません。

さらに次の機会があることが見えてくると、
「こだわり」という行動様式への執着は、
必要でなくなるかもしれませんね。

というわけで最大の対応は、
「楽しい✨」が増えることかと思います。


◇積み重ねで生まれたこだわりについて

このこだわりが生まれるには、
いくつかの積み重ねが存在していることでしょう。

こうした日々の積み重ねの多くは、
お子さんがむずがったりすることに合わせて、
周囲の大人が用意してきた習慣です。

衣服や生活様式には、
自閉症でなくても多くの人がこだわります。

その行動様式が、
生活の中で見出した心地よい状態、
あるいは心地悪さを緩和する状態につながるからです。

つまりは幼い子がぐずる様子を見て、
少しでも良い状態にしようと周囲が整えてきた環境から、
そのままに据え置かれた状態です。

困らないうちには、
素敵な工夫だったであろう様式なんですよね。

ただ、今の状況には合わなくなったものなんです。

この活路は、
段階的モデルチェンジにあるでしょう。

この場合は、
「徐々に予告して変えていく」で、
良いかと思います。

ただし心地良さは守る必要があります。
誰だって心地の悪い状態は受け付けませんから。

服にこだわっているのなら、
見た目や触り心地が好みであったり、
着替えのしやすいなどの理由があるでしょう。

小さい子の場合は、
いずれサイズが合わなくなります。

だから、
「大きくなってるね〜」
「お洋服が小さくなっちゃうね〜」と、
予告をしていく。

それと合わせて好みの服を用意していく。

そうやって、
新たなこだわりを積み重ねるイメージでいくと良いと思います。

この手の生活様式のこだわりは、
あって悪いものでもありません。

ただ固すぎると困るというだけで。

お気に入りがいくつもあると、
固執はやや緩和するかと思いますよ。

朝のルーティーンのような様式がある人には、
その後に続く見通しへの不安があることが多いです。

生活全般を緩やかにルーティーン化することや、
スケジュールを呈示することを通して、
見通しを持てた経験を時間をかけて重ねていく必要があるでしょう。
そのためにはルーティーンを上手に活用することです。

安心材料を増やしてあげることで、
特定のルーティーンという唯一の安心材料への固執を、
少し緩めてあげられるかもしれません。

上記とは違う理由によるもの
もうひとつ、
上記には挙げなかったものとして、
困っているときの行動があります。

これは常態化していればこだわりに見えるかと思います。

これについては、
またいずれ書きたいと思います。

結局なぜこだわるのか

それは安心感や楽しさなどの、
快適な感情を得たいからだと思います。

自閉症のお子さんの人生は、
世の中の感覚的な刺激への適応への、
大変な労力から始まっています。

こだわりは多くのお子さんにとっての、
安心ツールであったり、
便利なツールであったりするのでしょう。

彼らの世界は毎日広がっています。
広がる過程でツールを必要とするのであれば、
それはおそらく必要なものなんです。

何らかの働きかけが必要な場合もあるでしょうが、
基本は「こだわりとは上手に付き合う」ことが、
お子さん自身にとっても周囲にとっても、
良い経験になるのではないでしょうか。



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