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【0006】えむしたのこと「ねえ、それってタトゥーいれてんの」
常盤色について、世間一般では奇異と羨望の視線を受けることがしばしばだ。正式名称は毛細血管変形常盤症。発症は突発的で、原因は未だ解明されていない。現状、太陽フレアによる人体への影響が最も有力視されている。
わたしは、幼少期のうちに爪の内側の皮膚に症状が現れた。それはクリアなマニキュアに一粒のネイルストーンを落としたような、ささやかな変化だった。最初は、ほくろみたいなものでしょうと診断された。それは消えなかったけれど、大きくなることもなかった。
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ルームシェアをしながら、歌い手活動をしている「明日」と「えむち」。明日の部屋の一輪挿しが枯れ、花瓶の水が澱みはじめた頃、えむちはようやく今回の失踪が普段の気まぐれとはどこか違うのではないかと察する。不安は的中しており、明日の体には常盤色化と呼ばれる異変が生じはじめていた。植物の蔦を模したようなしみが皮膚に広がり、やがて全身を覆ってしまう奇病。一方、えむちはある事件をきっかけに人前で歌うことができなくなっていた。移り変わってゆく、彼女たちの季節を追う物語。
小説「えむしたのこと」
300円
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