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32.03 2次曲線(放物線と離心率)
噴水、打球などで日常的にも馴染みのある放物線を、2次曲線 (円錐曲線) の視点から話します。
放物線の定義
平面において、ある点からの距離とある直線からの距離が等しい点全体を
放物線といい、このときのある点は焦点、ある直線は準線(じゅんせん)と
呼ばれます。
※ 放物線の方程式を早く知りたいなら、上の目次から「定義から方程式を導く」に飛んでください。
楕円や双曲線と比べると分かり難い定義ですね。前回の考え方だと放物線については何も言えないので、別の手法で円錐曲線を研究した結果です。
さて円錐の切り口が異なるのは、切断する平面の角に依ることは分かると思います。その角は次のように考えます(アポロニウスの研究)。
円錐の軸を基準に、母線との成す角を$${\alpha}$$, 切断面との成す角を$${\beta}$$とすると
$${\alpha<\beta}$$のとき、円のような曲線 (楕円)
$${\alpha=\beta}$$のとき、一方が開けた曲線 (放物線)
$${\alpha>\beta}$$のとき、2つの曲線 (双曲線)
となります(※付録1)。アポロニウスは、これら3つの曲線を前回とは別の視点である比を用いた研究によって得た結果の1つが放物線の定義です。比に着目するのがアポロニウスの円を発見した人らしいですね。
その比というのは、ある点Fとある直線$${\ell}$$を設定したとき、曲線上の点Pから直線までの距離PHに対する点Fまでの距離PFです:
$${e:=\dfrac{PF}{\:PH\:}.}$$
この比は離心率 (eccentricity) と呼ばれます。
※ eccentricity は、エキセントリック (eccentric) の名詞形で、中心がずれている意。
そしてこの比に関して次のような結果を得ました(※付録2):
$${e<1}$$のとき 楕円
$${e=1}$$のとき 放物線
$${e<1}$$のとき 双曲線
これによって3種類の曲線が特徴付けらえるので、これを定義にすることも可能です。ただしその際は、前回の定義と同値であることを証明する必要があります。
注:離心率の定義からマイナスになることはないので、$${0< e <1}$$と書くところを{e<1}$$と書きました。こうすると分かりやすいし、覚えやすいからです。
$${e=0}$$については付録2の説明部分をご覧ください。
放物線の定義は "$${e=1}$$のとき 放物線" から来ています。実際
$${e=1}$$ということは、$${\dfrac{PF}{\:PH\:}=1}$$ということなので$${PF=PH}$$が得られます。これを文にしたのが最初に記した定義です:
平面において、ある点からの距離とある直線からの距離が等しい点全体を放物線という。
ところで、この定義の放物線とすでに学んでいる放物線とは同じものかと疑いたくなりませんか。歴史的順序で言えば、アポロニウスの円錐曲線論が先で、放物運動の解析が後です。$${e=1}$$の円錐曲線は parabola と呼ばれていますが、この事実を踏まえて parabola を "放物線" と訳したのだと思います。うまい訳ですね。
定義から方程式を導く
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