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32.02 2次曲線(楕円と双曲線②)
楕円と双曲線の定義を紹介します。そのために、その元となった円錐曲線についても触れます。
楕円と双曲線の定義
平面において
ある2点からの距離の和が一定である点全体を楕円といい、
ある2点からの距離の差が一定である点全体を双曲線といいます。
このときのその2点は焦点(しょうてん focus)と呼ばれます。
これを受け入れて楕円と双曲線の方程式を導くのがふつうの流れですが、この定義にしても、楕円や双曲線にしても突飛ですよね。大学数学ではよくあることですが、どこから来たのか知りたいと思いませんか。
急ぎたい場合は上の目次から「定義から方程式を導く」に飛んでください。
中学数学で学ぶ平面図形は、ユークリッド原論を直観的に扱ったものです。このユークリッド原論は紀元前300年頃のギリシャで編纂されたものと言われていて、数学の発展に寄与しています。幾何学(図形)以外にも数論(整数の不思議)についても触れられています。
平面の幾何がほぼ研究つくされた後の紀元前230年頃にペルガのアポロニウスによって円錐曲線論が書かれます。この中で、円錐を頂点を通らない平面で切断すると3種類の曲線が現れるという研究結果が発表されます。今日でいう楕円(ellipse)、双曲線(hyperbola)、放物線(parabola)です。(※付録1)
※ ペルガはトルコの地名で、アポロニウス(B.C.262-B.C.190 頃)は、あのアポロニウス円のアポロニウスです。
※ アポロニウス円とは、平面上の2点A,Bからの距離の比が一定である点全体は円であるというものです。高校数学Ⅱの軌跡で顔を出します。
2種類の円錐曲線について研究した結果の一つが、楕円と双曲線に関する性質です:
楕円上の点は、ある2点からの距離の和が常に一定であり、
双曲線上の点は、ある2点からの距離の差が常に一定である。
残りの曲線は現在放物線と呼ばれているものなので、この性質によって曲線が特徴付けられます。なのでこれを曲線の定義にしたのです。(※付録2)
※ 説明しにくいので、楕円、双曲線という用語を使いましたが、研究段階では別の名が付けられていたと思います。
定義から方程式を導く
楕円の方程式
定義 ある2点からの距離の和が一定である点全体を楕円という。
定義に従って方程式を導きたいので、座標平面に次のような設定をします。都合の良いように座標を設定しますが平行移動することで可能です。
ある2点を$${\text{F}(f, \: 0), \: \text{F}'(-f, \: 0) \:\:(f>0)}$$、楕円上の点を$${\text{P}(x, \: y)}$$とし、距離の和を$${2a \:\:(a>0)}$$とすると
$${PF+PF'=2a}$$
と書けます。このとき$${2a}$$として良いのは、和が5であっても$${a=\frac{5}{\:2\:}}$$と選べばよいからです。ここで$${0< f< a}$$です。なぜなら
![](https://assets.st-note.com/img/1733369681-2OpHq8aVE7kzMUSBWbwQmouY.jpg?width=1200)
2点間の距離公式から
$${PF=\sqrt{(x-f)^2+y^2}, \: PF=\sqrt{(x+f)^2+y^2}}$$
となります。したがって
$${\sqrt{(x-f)^2+y^2}+\sqrt{(x+f)^2+y^2}=2a}$$ ・・・⓪
この式を巧みに式変形していきます。両辺を自乗しても導けるのですが、計算をより巧みにしないと大変なので、よくある手順で変形します。移項して
$${\sqrt{(x-f)^2+y^2}=2a-\sqrt{(x+f)^2+y^2}}$$ ・・・①
ルートを消すために両辺を自乗して整理すると(各自で確認してください)
$${a\sqrt{(x+f)^2+y^2}=a^2+fx}$$ ・・・②
さらに両辺を自乗して整理すると
$${(a^2-f^2)x^2+a^2y^2=a^2(a^2-f^2)}$$ ・・・③
となります。$${0<f<a}$$より$${a^2(a^2-f^2)>0}$$なので、これで両辺を割ると
$${\dfrac{\:x^2\:}{a^2}+\dfrac{y^2}{\:a^2-f^2\:}=1}$$ ・・・④
ここで終わっても良いのですが、既に紹介してある標準形とするために
$${b:=\sqrt{a^2-f^2}}$$とおくと
$${\dfrac{\:x^2\:}{a^2}+\dfrac{\:y^2\:}{b^2}=1}$$
となります。逆に、この方程式を満たす点$${\text{P}(x, \: y)}$$は$${PF+PF'=2a}$$を満たす・・・と高校教科書などでは書かれていますが本当ですか。大学数学の教科書でこのように書かれていたら、必ず自分でそうなるか否かを確認します。数学者が書いているのだから "間違いない !" という考え方はしないからです。指導教官付きのセミナーでは必ず突っ込みが入ります。「では証明してください」「・・・」。初期にみる光景です。
上の式変形が同値変形なら逆は同時に成り立つので問題ありません。確認してみましょう。
⓪から①は移行しただけなので同値変形です。
①から②は両辺を自乗し、②から③も両辺を自乗しています。
③から④は0でない数で割っているので同値変形です。
①から②、②から③の変形は同値変形ではありません。この式変形は
$${a=b \:\: \Longrightarrow \:\: a^2=b^2}$$
を使っていますが、逆は成り立ちません。例えば
$${(-3)^2=3^2}$$ だけれど $${-3\neq 3}$$ だからです。
逆が成り立つには条件$${a>0, \; b>0}$$が必要です。実際このとき
$${a^2=b^2 \: \Rightarrow \: (a-b)(a+b)=0 \: \Rightarrow \: a-b=0 \: \Rightarrow \: a=b}$$
真ん中の ⇒ は$${a>0, \: b>0}$$より$${a+b>0}$$だからです。
このことから、①から②、②から③で何を確認すればいいのかというと
$${2a-\sqrt{(x+f)^2+y^2}>0}$$ と $${a^2+fx>0}$$
です。④の式$${\dfrac{\:x^2\:}{a^2}+\dfrac{y^2}{\:a^2-f^2\:}=1}$$から導ければいいのです。
数学の力を着けたい人は、下にヒントを付けておくのでこの証明を考えてみてください。この証明については、最後の付録動画の前に書いておきます。
なお、別の方法を使えば簡単な計算で確認することができます。これは別のところで述べます。
ヒント① $${\dfrac{\:x^2\:}{a^2}+\dfrac{y^2}{\:a^2-f^2\:}=1}$$から分かることは
$${0\leqq \dfrac{\:x^2\:}{a^2}\leqq 1, \quad 0\leqq \dfrac{y^2}{\:a^2-f^2\:}\leqq1.}$$
ヒント② $${2a-\sqrt{(x+f)^2+y^2}>0}$$を導くのは大変なので、同値な式
$${4a^2>(x+f)^2+y^2}$$
を導きます。
さて楕円ですが、実際に円のように描くことも出来る(※付録3)し、ラグビーボールや檸檬に頼らずとも見ることができます。大根の先っぽは円錐と考えられるので、これを長い円ができるように切れば良いのです。他に、円柱を切断してもその切り口は楕円です。なので大根、きゅうり、ソーセージを切ることで見ることができます。円柱の切り口が楕円になっていることは付録4で証明しています。
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