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rie19
牛舎の日々
今は、福祉の仕事をしてますが、
実は数年前まで酪農家を目指してました。
農業高校の3年間、ずっと牛舎に入り浸り、
毎日牛乳を搾ってたあの頃。
授業でも当番でもなく
毎日牛舎に来るような生徒には
担当の牛がつけられた。
自分の担当は1年生の時
6月頃に生まれた子牛。
毎日顔を見に行って、
分娩の時も、春休み中牛舎に駆けつけて
なんとか立ち会えた。
1年牛乳を搾り、自分は卒業しお別れした。
他県に進学したからもう会えなくなった。
離れても、繋がりを保ってくれたのは
牛の耳に付いた黄色いタグ。
それは個体識別の為の番号で
専用のサイトに10桁のタグの番号を入れれば
その牛がどこの牧場で登録されてて
どこで生まれたかとかが分かる。
いつ死ぬか、いつ売られるか
どの可能性も常にあり得る、
家畜の世界で生きる相棒との唯一の繋がり。
でも、思ってたより早かった。
卒業して1年。
ある日、なんとなく見てみたら…
うろ覚えだけど、
屠殺場かどこかの名前が書いてあった。
ああ、もういないんだ……。
思い出が完全に思い出になってしまった。
淡々とした画面の文字を眺めながら、
あの大きな体の温もりを思い浮かべる。
畜産を離れた今も牛に触りたいくらい
牛が好き。
言い表しようが無いけど、
あんなに見てて触れて
面白い、興味深い生き物はいない。
進学後も農業の学校に行ったけど、
畜産農家で2週間働いてくじけてしまった。
実家が農家とかではないので
一生畜産の世界に入ることは無いし
酪農家のように牛に接する事もなさそう。
もう、
過ぎ去った人生の一部分になってしまったけど
今の自分の大切な一部。
大切な時間。
大切な………。