宅建士資格は店舗開業・店舗経営でかなり活かせる
会社員時代に取得した宅建士の知識が役に立つ
宅建士(宅地建物取引士)の資格は、宅建業法に定められた独占業務があるので、不動産の営業職として活躍したいなら必ず取得しておきたい資格です。
また、不動産営業以外でも、不動産に関する知識が求められる職業、例えば金融業や証券業、保険業、建設業などの仕事に就かれている方でも宅建士の勉強に習得した知識はかなり活かされます。
ここまでは一般的な宅建士資格のメリットですが、私の経験上、不動産に関わる職種なら全般的に宅建士の知識は活かされると思っています。
元々私が宅建士を取得しようと思った理由は、いつか不動産投資をやりたいと思っていたことと、営業職ではないですが不動産業界で働いていたので、知識として持っていた方がいいと考えたからです。
資格を取得したものの、しばらくは宅建士資格を活かせる機会がなかったのですが、勤務先の会社の新規事業として飲食業に参入したことを機に、「宅建士の勉強をしておいて良かった」と思えることが何度もありました。
おそらく「飲食業で役立つ」というよりは、店舗ビジネスをしている方全般に役に立つと言えるでしょう。
ということで、今回は宅建士資格の取得メリットを紹介します。
飲食業では開業時と運営に知識が活かされる
店舗を開業しようと考えている方にとって、「宅建士の資格なんて本当に役立つの?」と、疑問に思う方もいるかもしれません。
確かに試験範囲は、飲食業とは全く関係ない分野がたくさん出てきますし、資格を持っていない飲食店経営者はたくさんいます。
ですが、間違いなく店舗運営において宅建士試験に出題される知識は100%活かせます。
その理由と具体的な利点について紹介します。
賃貸借契約の知識は店舗運営全般に役立つ
店舗を開業する際、まず必要になるのが物件の確保です。
多くの場合、店舗物件を借りるためには不動産会社を通じて賃貸借契約を結ぶ必要があります。
この賃貸借契約の内容は非常に重要で、賃料や契約期間、敷金・礼金の取り扱い、解約時の原状回復義務など、さまざまな条件を含んでいます。
宅建士の知識があると、賃貸借契約の内容を深く理解することができるため、不利な条件を回避したり、自分に有利な条件で契約を結ぶことができます。
賃貸借契約において、最も重要な条項の一つに、解約時の原状回復義務や違約金の有無があげられます。
賃貸借契約書を読み込んだとしても、その内容が一般的に普通なのか、相手に有利になり過ぎていないかなどは、ある程度の知識がないと判断がつかない場合があります。
店舗ビジネスを長くやっていれば、賃貸契約を解約することは意外とよくあります。
思ったほど売り上げが取れず閉店する場合もあれば、今よりもっと規模を大きくするために移転する場合もあります。
定借契約(定期借家契約)により契約期間満了で退去せざるを得ない場合もありますし、個人的な事情により契約期間途中に解約しなければならない場合もあるでしょう。
不動産を借りている側の事情により解約する場合、契約書をしっかり読み込んでいないと予想以上にお金を持っていかれるかもしれません。
宅建士試験に合格できるくらいの知識があれば、不動産契約についてしっかり知識が身に付いているはずなので、必要以上に費用がかかるリスクを避けることができ、不動産会社と交渉がしやすくなります。
このように、賃貸借契約に関する知識が豊富であることは、店舗開業時に大きなアドバンテージとなるでしょう。
不動産業者との交渉力が向上
宅建士資格を持っていることで、不動産業者との交渉においても有利に立ち回ることができます。
店舗用物件の契約を進める際、賃料や更新料など、細かな条件についての交渉が発生することが少なくありません。
宅建士試験に出題されるような不動産用語がたくさん出てくるはずです。
もちろん不明な単語は営業担当に確認しながら話を進めていけばいいのですが、簡単に説明を聞いただけでは理解できない箇所がたくさん出てくるはずです。
知識不足で理解できていない状態で契約を進めることは絶対にしてはならないことです。
宅建士試験に合格できるくらいの知識があれば、契約内容や法的なルールについての理解が深く、より専門的な知識をもとに交渉を進めることができます。
不動産投資の視点で物件を選定
店舗を開業する上で、物件選びは成功のカギを握る重要なポイントです。
宅建士資格を持つことで、不動産投資の視点を持ちながら、将来的な価値を見越して物件を選定することが可能になります。
例えば、店舗の立地が将来的に発展するエリアかどうか、賃料の妥当性や物件の資産価値などを考慮した選び方ができるようになります。
また、賃貸ではなく、物件を購入して自社物件として店舗を運営する場合でも、宅建士資格が役立ちます。
物件購入時の契約内容や手続きの流れを熟知しているため、不動産取引をスムーズに進めることができ、リスクを最小限に抑えることができます。
飲食店経営も事業投資です。
決して安くない開業資金をつぎ込んでお店を作り、集客して売上を伸ばし、必要経費を支払って、残ったお金がリターンになります。
投資する前に、必ず投資先について調べなければなりません。
投資金額が高額になるなら、慎重に時間をかけて調べなければなりません。
投資先を研究するには、絶対に知識が必要です。
飲食事業において、出店エリアの調査にも不動産の知識は不可欠です。
トラブル対応力が向上
店舗経営には、時に不動産に関するトラブルが発生することがあります。
例えば、隣接する店舗との境界問題や、賃貸借契約に関する解釈の違いによるトラブルなどが考えられます。
不動産に関する法的な知識があれば、こうしたトラブルに対して迅速かつ適切に対応できるようになります。
トラブルが発生した際に、弁護士に相談する前に自分である程度の解決策を考えたり、どのような手続きを踏むべきかを判断できることは、時間とコストの節約につながります。
また、事前にリスクを予測し、契約書に盛り込むべき内容をしっかりと把握しておくことで、トラブルを未然に防ぐことも可能です。
開業後の不動産関連業務にも応用可能
店舗を開業した後も、宅建士資格の知識は役立ちます。
例えば、将来的に複数店舗展開を考えている場合、物件の選定や賃貸借契約の更新、さらには退去など契約解除の対応など、宅建士の知識が大いに活用されます。
新規店舗のオープンや、移転の際にも、物件選びに迷わず、より適切な条件で契約を結ぶことができるため、経営の安定にもつながります。
また、店舗の賃貸借契約だけでなく、例えば店舗の拡張を考えたときに隣接する土地の取得や、賃料の見直しなど、不動産に関連するあらゆるシーンでその知識を活かせます。
これにより、外部の専門家に依存することなく、経営のスピード感を保つことができるでしょう。
持っておけば必ずプラスに働く資格
私は宅建士資格を取得した後も、不動産営業で活かしたことはなく、独占業務は一度もしたことがありません。
上述しましたが、私の取得理由は不動産投資に役立つと思ったからです。
また、不動産の知識は仕事だけではなく、個人の住宅における契約・解約時にも知識が活かせるので、プライベートでも役に立つことがあります。
そして、今回ご紹介した通り、店舗開業においても多くのメリットをもたらします。
賃貸借契約の知識や、不動産業者との交渉力、物件選定の視点、トラブル対応力、さらには開業後の不動産関連業務まで、あらゆる場面で活躍の場があります。
もちろん、宅建士資格を持っていなくても店舗開業は可能ですが、開業の成功率を高めるためには、少しでも多くの知識を持っておくことが重要です。
もし、これから店舗開業を考えている方がいるならば、宅建士資格の取得を検討してみるのも良いかもしれません。
資格取得のための勉強は決して簡単ではありませんが、店舗開業後に得られるメリットを考えると、その価値は十分にあると言えるでしょう。