《和歌》こういう年もある。
さりともと 嘆き嘆きて 過ぐしつる 年も今宵に 暮れ果てにけり(『千載和歌集』470 前左衛門督公光)
そうは言ってもこのままでは、と 嘆きを重ねて 日々過ごしてきた。
そんな年も今宵 嘆きの晴れぬまま、暮れ果ててしまったよ
2020年が終わっていきます。
アメリカのタイム誌は、今年を過去最悪の年だと認定しました。かつてヒトラーを「最悪の人」と認定し、表紙に❌付きで掲載したタイム誌です。そのタイム誌が、同じ❌を今年使いました。❌を当てられたのは「2020」。今年そのものに対し、否定の意を示したのです。
❌は最悪を意味します。しかしそれだけではありません。ヒトラーが❌を与えられたのは1945年5月7日号。4月30日に彼の死が明らかになった後です。❌は最悪の象徴であると同時に、打倒・超克の意味も付与されてきました。タイム誌は、おそらくワクチン接種の開始を念頭に、2020に大きく❌をつけたのでしょう。
いかなる場合にも希望を失わず、タフネスを誇り前進の意思を抱き続ける、アメリカンスタイル。それは格好良いと思います。
だけどちょっとしんどい。それをしんどいという悠長な人間は置いていかれるのかもしれない。アメリカはそういう正義がありそうな国だとも思う。
アメリカはそれで良い。だけど僕はもう少し、せめて年が暮れ果てるまでは、胸に湧き上がる絶望感に浸らせて欲しい。しんどかった、しんどい、ちょっと立ち上がる気力が湧かない。そういう気持ちのままでへたり込む時間をください。
頑張ろうぜ、始めてみようぜ、と声をかけ続けるだけの一年でした。今度こそはと思いつつ、だめか、まだか、と期待を裏切られ続ける一年でした。
今夜は、年の瀬までは、うなだれため息を吐く公光を友とすることを許して欲しい。「2020年」。全てを否定するには頑張り過ぎたと思うから。