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kotatsu stories

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超短編集の第1弾になります
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#小説

Sの驕り

Sの驕り

くだんの店に入ってからも違和感は拭えなかった。

Sの様子はというと、生ビールの注文を済ませるなり、例の”おねいさん”を引き留めて本気で誘惑しているように見える。
評判の映画『スペンサー・オーラムの厄災』に誘っている。

どこか垢抜けない若い女店員も満更でもないような、それでいて抜け目のないような目でSを見ている。
値踏みをしているようだが、もうひと押しかもしれない。

Sの身長が伸びて、生前は、

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Sの復活

Sの復活

死んだ筈のSは生きていた。

あの日、駅までの道をやけに軽くなったSを抱えて歩いていると、大仰な笑みをたたえた大男が現れ、大して広くもない道が狭まったように感じたものだった。
やあやあ、これはこれは。いえねえ、おおごとだと聞きまして、我々はこうやってSを迎えに来たのです。
我々? なるほど、大男の側には小男が立っている。大男の存在が圧倒的なためか気がつかなかった。
「これは変死なのです。病院とか警

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将来の夢

父「将来の夢は何だっけ?」
娘「建築家だよ」(何回言わせんだよ)
父(だったら算数しみじみやれよ)
娘「パパの夢は?」
父「パパはもう……そうだな、会社の金を横領して場末のバーのママと駆け落ちだな。夜汽車で北にね。トレンチコート着て」
「それから……」
妄想はPriceless

※パパの妄想部分はテレビ番組『冗談ストリート』からパクりました。

Sの奢り

今日はSがおごるというので
わざわざ電車に乗ってやってきたのだが
肝心のSは約束の時間を大分過ぎても現れない
家に電話を引いておらず携帯を持たないSにこちらから連絡をとるすべはない
明日は暇かい? などとSからの連絡はいつも公衆電話から一方的にかかってくるだけである
このまま怒って帰っても大人げないと思い、二人で行くはずだった飲み屋に落ち着くことにした
ビールをちびちび飲んでいると、大慌てのSが店

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