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無職74日目〜バカ丸出しで生きる〜

心太朗は、気分が沈んだ日を乗り越えるため、無理せず自分に優しくする方法を見つける。理想の自分像に縛られず、バカな発想で気楽に生きることの大切さに気づいた彼は、自由に生きるための第一歩を踏み出す。

**無職74日目(11月13日)**

心太朗は、今日はなんだか気分が沈んでいた。

「あ〜、なんか気分が上がらないなあ」と、つぶやきながらソファにぐでーっと横になった。これまで、彼は同じように気分が落ち込むたびに「これは絶対、人生の終わりだ!」と一人で劇的な思考に突っ走っていたが、さすがに最近は少し落ち着いてきた。少し前ほど、「自分はダメだ、何もできない」と打ちのめされることはなくなったのだ。

そんな彼の様子を見かねて、妻の澄麗が「心太朗、今日はゆっくり休んだら?」と優しく声をかける。

「あぁ、でも何かしなきゃって気がしてさ…」と心太朗は答えるが、内心は「その通り、何もする気にならないんだよなあ」と正直なところを認めていた。焦りばかりで何もできない日には、自己嫌悪の渦に巻き込まれ、「こんな自分は人間として終わってる…」と大げさに考えがちな性格なのだ。

そんな日が続いたある日、心太朗はふと気づいた。「まあ、そんな日もあるわな」と。

実際、天気や気温、気圧、睡眠の質、もっと細かく言えば血圧や体温に体調まで、さらにはテレビやネットの情報にまで影響される人間が、毎日ハイテンションでいられるわけがないじゃないか!と一人で妙に納得したのだ。

「そうだよ、あのイチローだって毎回ヒット打てるわけじゃないんだし!」と、心太朗はまるで自分もプロスポーツ選手にでもなったかのように胸を張った。そう、あのイチローですら不調の日があると知った瞬間、自分もそれでいいんじゃないかと思い始めたのだ。しかし、そこはプロ。イチローは不調でもベストを尽くす。心太朗もこの点には見習わなければ、と決意を新たにした。

そこで彼は、毎朝の「今日の気分チェック」を始めることにした。気分が良い日、悪い日、そしてなんとなく普通の日。それぞれに点数をつけるというシステムだ。100点満点だけがポジティブでアクティブな日ではなく、その日の気分に合ったベストな過ごし方をした。

心太朗は、今日も「気分の点数チェック」を開始した。元気いっぱいで何でもできそうな日は80点。「今日こそ世界を制覇するぞ!」という勢いで始まり、1日を駆け抜ける。反対に、どうにもやる気が出ない日は10点で、「もう何もせず布団の中で溶けてしまいたい」という気持ちが占める。でも、心太朗の新しい目標は、その日その日の「気分に合わせ最高点」を作り上げることだ。

心太朗は過去に作ったルーティンを眺めながら気づいた。「これって100点の日用のルーティンだよな。元気バリバリの時しか成り立たないやつじゃないか」と。彼はそこで閃いた。10点の日のルーティンは、それに見合った簡単なものでいい。むしろ、色んなことを大胆に削り、いかに自分に優しくするかにかけようと決意した。

しかし、そんな風に割り切ったつもりでも、「いや、こんなに手抜きで大丈夫か?」と心配になる瞬間が訪れるのが人情だ。そこで心太朗は、さらに徹底した「代替案」作戦を考えた。

たとえば、神社まで行く気力がない日には、「じゃあベッドの上で拝めばいいじゃないか」と割り切る。チョコザップに行く気にならなければ、ベッドの上でごろりとしながらストレッチを一発。日記小説を書く日でも、なんだか頭が回らない日は台本だけ。Xでコメントをする気力が湧かないときは、素直に「いいね」を押すだけにしてしまう。

そして、極めつけに「本当に何もしたくない!」と思う日には、全ての作業を放棄して思う存分休む。そうやって、彼は日々の「人生のハードル」をどんどん下げていった。

「できるときはとことんやればいいし、無理な日は無理でいい。」そうやって心太朗は、無理せず素直に自分の気持ちに従うことの大切さを改めて噛みしめたのだった。

心太朗は、さらに「バカになる」という秘策を思いついた。そもそも自分が特別頭がいいと思っているわけではないが、どうにも人より余計に考えすぎてしまう。考えすぎて、気分が良いはずの日でもネガティヴになり、身動きが取れなくなることがあるのだ。そこで彼は決意した。

「とにかくバカになってやる!」

心太朗の頭の中には、妙な理屈が浮かんだ。「俺って、余計なこと考えすぎるのはやっぱ頭良すぎるからなんだろうなあ!すげーわ、俺!」と自分を妙に持ち上げ、「そんな天才だから、今日はハンデとして休んでやるわ!」という斬新な自己正当化が成立した。
いかにもバカ丸出しの発想だ。

心太朗はふと手に取った本の一節に目を留めた。それはカワグチマサミさんの『子育てしながらフリーランス』の一文で、こう書いてあった。「育児をしていると、周りや自分が作ってしまった『理想のお母さん像』にとらわれ、必要以上に『頑張ることが当たり前』と思い込んでしまうこともあります。」

心太朗は、「これだ!」と思った。自分の中の「理想の自分像」ってやつが、知らぬ間に重荷になっていたのかもしれない。そして「頑張ることが当たり前」なんて勝手に思い込んでいたことに気づいたのだ。

「よし、俺も理想像なんかぶっ飛ばして、バカ丸出しでいこう!」

心太朗は、どうも「人が気づかないことに気づいてしまう」性質があるようだった。そして、そんな性質のせいでしばしば疲れ果て、自己嫌悪の渦に巻き込まれてしまう。周りを見渡すと、心太朗のフォロワーたちも同じような傾向の人たちが多いように思える。彼らは、見えないことを見てしまうし、聞こえないことを聞いてしまう。そのせいで疲れて、イライラして、さらには自分を責めることまであるらしい。

「みんな繊細で、本当は頭がいいんだよなあ」と心太朗は思う。自分も含めて、こういう人たちは周りに気づかれないことに敏感だからこそ、普通の人が流してしまうことも見逃せないのだ。その結果、勝手にストレスを溜めてしまう。それが分かっているだけに、「自分、なんでこんなにダメなんだろう」と落ち込む羽目になる。

一方で、妻の澄麗はその真逆だ。彼女はいつも明るく、能天気で、根っからの楽観主義者。「私、生きることには執着あるから、絶対死にたくないよ!」と笑いながら平気で言ってしまう。心太朗は、そんな彼女を見て「人生って、シンプルに考えればいいのかもしれないな」とぼんやり思うことがある。

アフリカの奥地にいる部族に「日本は自殺する人が多い」と伝えると、「そんなのジョークだろ?」と大笑いするらしい。澄麗も流石に笑わないが、そのくらいの生命力がある。彼女の生き方は、ただただシンプルなのだ。人生に必要なのは、たぶん「複雑なことを考えないこと」なのだろう。

「よし!今日からバカ丸出しで生きるぞ!」心太朗は、自分の中で「バカ=賢い」と言い聞かせながら、どこかに向かって歩き出した。

バカな発想って、実は素晴らしいのだ。だって、バカは何をやっても「バカだから」で済む。どんな失敗も笑い飛ばせるし、いちいち悩まなくて済む。それに、本当のバカは決して頭良くならないけど、頭がいい人たちは、あえてバカになれるんだ。

「俺たちは頭がいい」

まさにバカ丸出し!でも、それくらいの心構えで良いのだ。


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