サイゼリヤ型組織・ドン・キホーテ型組織の違い
2019年に子供服D2Cブランドの会社の取締役に就任してから小売業の創業者の本をよく読みました。その中でもサイゼリヤとドン・キホーテの創業者の本はどちらも成功者なのに組織に対するアプローチが真逆で面白かったです。ちなみに読んだ本は
サイゼリヤは「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」で
ドン・キホーテが「安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生」です。
店長に売上責任を負わせないサイゼリヤ型組織
サイゼリヤの売上と利益に対する考え方は「飲食店の売上は立地と商品企画で決まってしまう」というものです。そのため、「売上目標や利益などの責任は本社が負い、店長・店舗側には売上目標は負わせずに、店長はコストと生産性目標のみ負う」体制になっています。
言われてみるとそのとおりで、いくら店長が頑張ったとしても立地の悪さや提供する商品の美味しさをコントロールできないのに売上目標を負わされてもコントロールできる部分は少なく、無理に売上目標をもたせたとしても成果が上がらず、現場が疲弊する結果になってしまいます。
コストや生産性目標を向上させる取組についても現場から意見を吸い上げ本部手動でマニュアル化・標準化を行っている様子が見受けられます。有名な話で言えば、掃除についても「サイゼリヤにおける掃除とは最終的に床に落ちているゴミをなくすこと、その上では掃除機はムラが多く効率が悪いので通路の幅に合わせたモップを導入することで掃除機を使っていたときよりも短い時間できれいに掃除ができるようになった」といったエピソードがあります。
サイゼリヤ型の組織とは権限と責任を本部に集中させ、標準化したマニュアルを全店舗に展開する中央集権型の組織だと言えるのではないでしょうか。
徹底した権限移譲のドン・キホーテ型組織
それに対してドン・キホーテ型組織はサイゼリヤとは真逆でとにかく店長にすべての権限移譲を行い、同時に売上責任も店舗が負うモデルとしています。
マニュアルを作らず、教えもせず、自分の頭で考え・行動する環境を実際に体験させることで自発的に成長していくという考えのもと、1店舗の仕入の4割に独自仕入を認めるなど店舗に大きな裁量をもたせています。
このように自由裁量を大幅にもたせて店舗の独自性を持たさた上で、店舗ごとが競争する仕組みを整えることで、労働(ワーク)ではなく競争(ゲーム)となるため、自発的に働く仕組みができたと本では書かれています。
組織のあり方もビジネスモデルに依拠する
少し前に流行ったティール組織、心理的安全な組織など組織論だけが独り歩きするケースも見かけますが、日本の小売店で成功した2社の組織が真逆なように、組織論はその企業のビジネスモデルに強く依拠するものだと感じました。
一方でありがちなのはサイゼリヤ型組織があうビジネスモデルのはずなのに、ドン・キホーテ型の組織体制を取り入れてしまい、自分ではコントロールできない売上目標を負わされた店長・現場が疲弊するケースや、逆にドン・キホーテ型組織が合うはずなのに、中央の権限が強く箸の上げ下ろしまで指導されて現場の活力が失われてしまう企業もあるように思います。
僕自身が経営に関わっているアパレル業界においても、サイゼリヤ型の組織がいいのか、ドン・キホーテ型の組織がいいのかはその企業の商品企画の方法によって変わるのではないかと思っています。僕らの子供服D2Cのブランドはサイゼリヤ方式で経営してきましたが、2022年3月にM&Aにより親会社になった会社はドン・キホーテ型組織で経営しており、同じ業界でも組織体制がまったく異なり、その違いを興味深く観察してきました。
いずれにせよ、はやりの組織論にだけ注目することなく、自社のビジネスモデルにはどういった組織が合っているのかを考え続け、その上で流行りの組織論の取り入れられる部分とそうではない部分を考えるのが大事なのではないかと思いました。