自己紹介として、初めての投稿に記載した「伝統は革新の連続」という事を大きなテーマとして、これまで取り組んで来たこと、現在取り組んでいる事などを、その時々の社会環境の変化も交えて書いていきたいと思います。途中で変わるかもしてませんが、おおよそ下記のような構成で週1ぐらいで更新していきたいと思います。
実は学芸出版社というところから2018年に本を出しているのですが、この本を書くにあたり1年半程度書き溜めた下書き原稿の中から、実際は出版しなかった事柄なども含めたり、時間も経っていますので、今の気持ちや考えも交えて深堀し「伝統とは何か」や「日本の商品や技術を海外市場で売る」事にについて自分の考えや経験等を書き綴っていきたいと思います。
何も道標がないと、書き進むのが難しいように感じますので、構成は前述の本の目次に合わせてみようかなと思います。
(本に記載した事をそのまま記載するつもりはありませんので、そちらにご興味ある方は、書店やネットでご購入頂き、読んでみて頂ければ嬉しいです。)
「伝統の技を世界で売る方法ーローカル企業のグローバルニッチ戦略」(学芸出版社) 出版社リンク(ご購入・お問合せ)https://bit.ly/2H5EJA1
もくじはじめに
1章 中小企業の活路は海外にあり―日吉屋メソッドができるまで―
2章 海外展開の前にすべきこと
3章 海外展開で知っておかなければならないこと
4章 TCIメソッド 海外代理店・バイヤーとの商品企画・開発
5章 広報・ブランディング
6章 日吉屋メソッドはどんな分野でも通用する
はじめに
私の経営する株式会社日吉屋は江戸時代後期創業。
5代160年以上続く「京和傘」の現存する唯一の製造元です。
和傘とは、主に竹と和紙でできている伝統的な工芸品で、昔は誰もが雨傘や日傘として使う、日常生活品でした。
我々が現代では当たり前に使っている洋傘、ビニール傘、折りたたみ傘のような感覚で、昔の日本人は、ごく当たり前に竹と和紙で出来ている和傘を日常的に使っていたのです。
しかし、今では日常的に和傘を使う人は、ほぼ皆無に近くなってしまい、全国的に見ても、和傘製造元は、10件程度あるかないかという状態です。
京都では100年以上続く企業が約1000社以上もあり、中には数百年の歴史を誇る老舗も珍しくはないような場所柄、160年程度の歴史では、新参者の部類かもしれません。
和傘の歴史はこちらに記載しております。→日吉屋Web
しかし、和傘の歴史自体は奈良時代に遡る事が出来、1000年以上の歴史があります。当時多くの文化や技術が中国から伝来しましたが、和傘も仏教やお茶、その他の様々な文物と共に伝わったようです。
その後、日本独自の発展を遂げ、最盛期には全国で年間1700万本以上生産されていたいたようです。しかし、今では伝統工芸品と見なされ、残念ながら普段の生活で雨傘、日傘として使用することは大変少なくなってしまいました、、、。わずかにお寺や神社、伝統芸能、各地のお祭りや行事などの中で、特別な時に、特別な用途で使う道具になってしまいました。
日吉屋は江戸時代後期の創業で、2代目の代の最盛期には職人を40~50人抱え、本店以外に支店もあるような状態だったようですが、戦後の高度経済成長と反比例する形で悪化の一途を辿り、20年ほど前にはすっかりさびれてしまい、家族だけで細々と傘を作り続けているという極限状態。気が付けば京都市内に200件以上もあったといわれる和傘製造メーカーも日吉屋を残すのみとなってしまいました。
日吉屋も老舗とは名ばかりで取引先もほとんど無く、洋傘や雑貨の仕入れ販売にトライするも決定打にはならず、最後はビニール傘まで売る始末で、年間売上も100万円台に低迷し、遂には事業継続を断念し、近々廃業するという状態まで追い詰められていました。
詳しくは後述しますが、やっている本人達は元より、誰もが「もうダメだ」と匙を投げているような状態のところに、伝統工芸には全くのド素人で、会社経営の経験皆無の元公務員の私は、2003年、29歳の時に前職を退職し、日吉屋の和傘職人として、新たな世界に飛び込むことになりました。セカンドキャリアをスタートし、その後5代目代表として事業を継承する事になりました。
その後も、紆余曲折ありましたが、「伝統は革新の連続」という企業理念を制定し、伝統技術を受け継ぎながら、それを現代生活の中で使える商品に転化し、デザイン照明「古都里-KOTORI-」を中心としたデザイン化した工芸品を生み出す事に成功し、約15か国に出荷していました。
現在はコロナ禍もあり、デジタル化が急速に進んでいる事も合わせて、海外小売り店への直接卸販売や、BtoB向け業務用インテリア商材の販売、そして、一般消費者への、いわゆる越境ECにシフトしつつあります。
(本を書いた3年前と今現在の一番大きな違いはこの販路開拓の部分ですので、今回はアップデートした考えや経験を書いていきたいと思います。)
元々100万円台だった売上は、現在グループ会社も合わせて約3億円程度になりました。倍率だけなら200倍以上ですが、全体としてはまだまだだと感じています。日吉屋の工芸部門はこのうち、約1億弱を占め、伝統産業の手工芸、特に「和傘」という現在ではほぼ使われなくなった商品が主力であることを考えれば、かなり健闘している方ではないかと思いますが、
ここで満足することなく、現在18人いるスタッフの将来を考えれば、更なる改善や経営基盤の安定化など、取り組むべき課題は山積しております。
しかし、ほぼ1人で製造から販売まで全てやらなければいけなかった当初に比べれば、夢のようで、会社として出来ることは大分広がったように思いますし、同じ理念や夢に向かって集まってくれているスタッフの事は本当に誇りに思います。そして、弊社商品をお選び頂き、お使い頂いているお客様にも日々感謝しながら仕事に取り組んでいます。
日吉屋の代表として、国内外の新市場に挑戦を続けながら、一方ではグループ会社としてTCI研究所を設立し、日吉屋で培った商品開発のノウハウや海外事業で蓄積した経験やネットワークを活かし、自社工房だけではなく、幅広い分野の中小企業の支援事業や海外プロジェクトを立ち上げ、「伝統の技を世界で売る」ことに取り組んでおり、支援先企業は全国のべ500社以上を数えるようになっております。
これまで、日吉屋がいかにして伝統工芸品からデザイン照明を開発し、海外事業を展開するに至ったかと、その手法を独自にメソッド化し、伝統工芸だけではなく、広く全国の伝統産業や中小企業の皆様の新商品開発や販路開拓、海外事業に活用して頂き、日本の製造業の海外事業に役立つ新たなマーケティング理論 日吉屋メソッド「Next Market-in」を第1章でご紹介したいと思います。
私が日吉屋の後を継いだ時には、技術もお金も人脈も全く何もない状態でした。それから18年余りで、何とか伝統産業で人並みに食べていけるようにはなったと思いますが、売上高や人員で見ると、特段大きな規模ではありません。
しかし、中小企業、中でも伝統工芸の分野では、無理をして1社で売上高を数十億に拡大することは現実的ではありませんし、その必要も感じません。
それよりも、新規事業を立ち上げ、売上高を数千万~1億円程度の事業に育てる方が現実的ですし、そのような事業を日本全国で数千社で立ち上げることが出来れば、どれだけ地域経済の活性化や文化の継承に貢献出来ることでしょう。
総務省の「事業所・企業統計調査」(2006)資料によると、日本には420万社の中小企業があり、これは全体の99.7%にあたります。
仮に新規事業の初期の売上高目標を年間3,000万円とし、海外事業をその内の20%の600万円とするなら、全体の1%の中小企業(4.2万社)が目標を達成できれば、1260億円(海外売上252億円)となります。
日吉屋単体でも、現在これ以上の売上を毎年コンスタントに計上する事は出来ております。
私のような者に出来たことは、必ずあなたにも出来ます。
そのための手法を本には可能な限り書きとどめましたが、ページ数の関係で、あまり深く書けませんでしたし、3年前から大きく経済・社会環境も変わっておりますので、内容をアップデートしていきたいと思います。
企業経営者の方、企業内で新規事業・海外事業をご担当される方、あるいはこのような企業を支援する立場におられる支援機関や地域プロデューサー方には、必ず参考になるという自負があります。
私は経営やコンサルティング等の専門教育を受けたことはありません。高校卒業後にカナダのトロントという町に留学しておりましたが、4年生大学に通っていたわけではありませんので、最終学歴は高校卒業です。従って大学教育さえ受けてはおりません。(正確には放送大学に在籍しておりましたが、当時仕事が多忙のため継続することが出来ず、最終的に除籍されてしまいました、、、)
つまり、ここに書く事は、全て自分で実践し、失敗を繰り返して試行錯誤の末にたどり着いた結論を凝縮した物で、実際に効果があると実証している手法のみを綴っております。
後を継いだ会社は年商100万円台しかなく、技術もお金も学歴も地縁も人脈も全く何もない、ごく普通の私でもこの程度のことが出来ました。
当時の私より恵まれた立場におられる方や、「和傘」という素晴らしくも、現代生活には全く無用の商品以上の可能性のある商品や技術を持たれている方は、全国420万社の中小企業の中にはきっと数多く存在するでしょう。
そして、これから、新しい事業や海外展開に取り組む場合でも、私が経験した無数の失敗を繰り返す必要はなく、より、最短で成功率の高い手法を選択できるのはないかと考えます。
きっと弊社の10倍の成功を半分の時間で達成することも十分可能かもしれません。
この本を読まれた方の心の中に何かしらヒントになる事が残り、経営者、従業員の皆さま方が誇りある、幸せな人生を送るきっかけになる事を願っております。
西堀 耕太郎
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