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「時代にそぐわない」というフレーズ

 「時代にそぐわない」とは、「そぐう」という言葉が「似合う」や「釣り合う」を意味していて、言葉、振る舞い、ルールが時代に合っていないときに使用される。
 謝罪会見で「時代にそぐわない」というフレーズを耳にすることが増えた。発言者の当人がごく自然に話した内容が、世間から見て違和感があり問題視されたときに「時代にそぐわないことを痛感しました」と謝罪する。
 しかし、「時代にそぐわない」を謝罪の理由として使うことに違和感を抱く。たとえば、差別的な発言をした人が「この表現は、時代にそぐわない表現でした」と弁解したとする。記者会見やネット上のリアクションをみていると、それ以上問い詰めることをしないが、僕であれば「時代が変われば、同じ言葉を使いますか?」と質問したくなる。つまり、時代遅れとなっている背景をどのように理解しているのか知りたくなる。

 時代にふさわしい事柄なのかどうかは、自分一人で決めることはできない。せまいコミュニティの中だと、外では問題視されるような言葉をある人が使っていても、注意されることは少ない。誰も注意をしないので、発言している本人は、その異常性に気づくことなく、外部の人間もいるオープンな場面でも、同じ調子で話をしてしまう。
 本人は、当たり前のように口にしていた言葉なので、不適切な発言を行ったことに自覚が湧かない。むしろ、不適切だと咎める人間のほうがおかしいと疑う。

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当たり前だと思っていたことを疑うと、新しい発見があるかもしれない。繰り返しの毎日にスパイスを与えるエッセイ集

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