SEO会社のマーケティングのやり方は、「SEO」以外にもたくさんある話
昔からある話として、SEO会社はSEOで案件を取るべきで、テレアポなどをすべきでない。という議論があります。
同様に、Webマーケティング支援会社は、自社が売っている技術(SEMやWeb広告、コンテンツマーケティングなど)を活かして、案件を取るべきであって、テレアポをしてる時点でその会社は信頼できない、という話もあります。
しかし、昨日ふと思ったのは『イノベーションのジレンマ』のクレイトン・クリステンセン教授はイノベーションを起こしたことはないかもしれないし、マーケティング業界の必読書『キャズム』を書いたジェフリー・ムーアもキャズムを超えたことはないかもしれないな、ということです。
ジェフリー・ムーアがキャズムを超えたことがあるのかどうかは知りませんが、仮に超えたことがなかったとしても、そのことはいささかも彼らの洞察の価値を減ずるものではないでしょう。
同様に、Webマーケティング支援会社が、Webマーケティングを活用せずに、テレアポで案件を取っていても、彼らのWebマーケティングノウハウの価値は減じるものではないかもしれません。
経営戦略・マーケティング戦略の中で、マーケティングの打ち手は決まる
私個人は、自社の経営資源や競合などの外部環境の中で、最適なマーケティング手法を選択をすべきで、その判断の結果として、SEO会社が「SEOよりも、テレアポが最適」だと思うのなら、そうすべきだと考える派です(テレアポされたいかはさておき)。
もちろん、SEO会社のWebサイトがSEOに強いのは営業・マーケティング活動上、プラスは大きいでしょう。
SEOで有名なナイルさんが運営する「SEO HACKS」は『SEO』『AMP』『canonical』などの関連ワードで軒並み1位を獲得しています。
ナイルさんに発注したいと思っている会社が、このSEO力の高さを見て、ナイルさんへの信頼度が上がり、受注確度が上がっている可能性は高いでしょう。しかし、だからといって、SEO会社が「うちもSEOを強化して、案件を獲得するぞ!」と考えるのは早計です。
■デメリット1:競争が激しい
そもそも、検索結果画面は限られているし、世の中で行われている検索数も限られています。既にいろいろな会社が「SEO」「SEO 会社」「SEO対策」などのキーワードで上位表示を狙って、しのぎを削っていますし、それを後発の企業がひっくり返せるか、というと微妙な気がします。
※検索広告も競合がびっしり・・
■デメリット2:検索エンジン経由の顧客が良い顧客かわからない
意外に見落とされがちな点ですが、検索エンジン経由で問い合わせをしてくる見込み顧客が自社にとって、良質な顧客になるかどうかはわかりません。
実際に、検索エンジン経由の問い合わせに関して聞く声としては、「検索エンジン経由で問い合わせをしてくる見込み顧客は、既に他の会社に発注を決めていたり、相見積もりになっている可能性が高い・・」というものです。
特に億単位の案件になるエンタープライズ向けの商材では、「問い合わせ」すら有り難くない、というのはよく聞く話ですね。
検索エンジン経由のユーザーは、検索結果画面の上位に表示されている会社の中から、2社、3社と選んで問い合わせをしてるはずですし、コンペになればなるほど、基本的には受注率が低下し、営業コストは上がり、自社のマーケティングパフォーマンスは悪化します。
SEO会社だから、検索エンジン経由で見込み顧客を獲得すべきだ、とは言えないでしょう。
購買プロセスの前半にアプローチするか、専門特化するか
もし私がいまSEO会社の経営者なら、「SEO」「SEO 会社」「SEO対策」などのキーワードで上位表示を獲得し、案件を取ろうとする努力は全くしないはずです。
一時期よりも数が減ったとはいえ、競合が多い業界ですし、それらのキーワードで流入したユーザーに、Webサイト上で他社との違いを理解してもらえるとは思えない。営業フェーズでの説明・説得コストが上がり、収益が圧迫されそうです。
そこで、マーケティングのセオリーではありますが、競争が働く前に自社に決めてもらいやすいマーケティング活動を展開すると思います。ぱっと思いつくのは、2つの方針です。
■方針案1:購買プロセスの前半にアプローチする
一つは、競争が働きづらい購買プロセス前半から、自社を認知してもらい、「SEO会社といえば、●●」という想起を取る方向です。
SEO関連のワードで上位表示を獲得しているナイルさんの場合も、「SEO HACKS」や「Content Hub」での良質な情報発信を通して、購買プロセスの前半(潜在層や準顕在層段階)からナイルさんを認知し、SEOコンサルを依頼する時に、真っ先にナイルさんを頭に思い浮かべてもらえるような活動を展開されています。
つまり、「SEO 会社 比較」「SEO 会社 おすすめ」で検索して、問い合わせをしてくる見込み顧客を増やそうとするよりも
・『SEOコンサルを依頼するなら、●●に依頼したいなー。』
・『よし、今年は予算化できたし、●●に問い合わせしよう!』
と、満を辞して、自社に相談してくれる見込み顧客を増やために、ブログやSNS、業界メディア(Web担当者ForumやMarkeZineなど)での情報発信。もしくは展示会やイベントで認知してもらった人たちに対して、メールマーケティングやセミナーで継続的にコミュニケーションを取り、購買プロセスの前半からアプローチし続ける戦略はアリでしょう。
※この文脈で、潜在層にリーチできるテレアポもアリだと思います。
「SEOに強い会社」といえば、アイレップ社、ナイル社、アユダンテ社などが思い浮かびますが、まだまだ顧客が認知可能なブランドに空きはありそうなので、それを狙いたいです。
■方針案2:専門特化する
もうひとつは、先日、SEO業界の偉人、辻さんが新会社を作られてましたが、専門特化することでしょう。
JADEさんの場合は、主に大規模ウェブサービスやウェブサイトを対象にしていくようですが、ECサイトのSEOに特化する、不動産業界のSEOに特化するなどが経営戦略、マーケティング戦略として筋が良い気がします。
同じく、競争の激しいホームページ制作業界では、アババイさんが建築業界に特化して、1,500サイト以上を制作されているのが、専門特化の事例としてわかりやすいです。
結論:SEO会社のマーケティングのやり方は、「SEO」以外にもたくさんある
結論、SEO会社はテレアポをしても良いと思いますし、「SEO」以外のマーケティング施策もあり得る。むしろ、「SEO」以外のマーケティング活動の方が筋が良いのではないか、という話でした。
「キャズム」を書いたジェフリー ・ムーアがキャズムを超えたことがないかもしれない、という一文を書きたいがために、3000字以上の文書を書いてしまいました。
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