人媒花
職場の裏のひいらぎ木犀が、今年も可憐な白い花をつけた。
大好きな香りを肺いっぱいに満たしたくて、木の下で深呼吸をする。
金木犀の香りが、太陽を燦燦と浴びたカルフォルニアのシャルドネだとすれば、ひいらぎ木犀や銀木犀のそれはアルザスのリースリングのようだ、とは個人的感想。
そういえば、木犀たちの実を見たことがないなとハタと気付く。
植物がよい香りを放つのは、虫に媒介をしてもらい、結実するのが目的だろうに。
そこで検索してみると、木犀には雌雄の株があり、江戸時代に中国から日本に輸入された折に、花付きのよい雄株しか入ってこなかった云々。
では、中国には木犀の実がなっているのかと検索したら、少しオリーブの実にも似た画像が出てきた。
確かにこの葉は金木犀のものだ。
いくらよい香りを放っても、めしべに花粉を届けられない日本の木犀たちが少し可哀想になる。
でも、待てよ。
例え、実がならなくとも、よい香りに魅せられた人間たちが、どんどん刺し木で増やしているから問題ないのか。
もしかして、木犀たちのターゲットは虫ではなくて、人なのか⁉︎
人媒花、そんな植物の生存戦略があってもおかしくないかもね。