コーヒーは3回に分けて飲む。
これはまだ僕がきみが淹れてくれるコーヒーを飲む前のお話。
早く会いたいと願う人がいる。
早くその時が来て欲しいと想う相手がいる。
どんなに好きな事をしていようと、誰かと過ごしていようと、頭の片隅に残るあの人がいる。
それはどんなに切なくて、苦しくて、幸せな事か。
会える日が決まっているから、切ない。
それまでは会えないのだから。
理性では抑えられる事も、本能はうずく。
顔を見て話したいと願うのは、なぜだろう。
誰と過ごしても、誰と話しても、決まって思い浮かべる人はいつだって同じだ。誰にも分からない未来を想像した時に隣にいるのは、いつだってきみだ。
僕はコーヒーの香りで、きみの横顔を思い出す。
街を一人で歩いている時にふと香ってくる、香ばしい香り。
そこにいるのは、スーツを着たサラリーマンじゃない。
長い髪を風に揺らしている、きみ。
駅前のコーヒースタンドで、街ゆく人を眺めるきみ。
僕の目にはいつもきみが写る。
その横顔をずっと見ていたいと思った。
コーヒーの香りの中で、きみの話をずっと聞いていたいと思った。
いつになったら想いを伝えられるのだろう。
どうだろう。熱いのは、目の前にサーブされたコーヒーだけじゃないみたいだ。
「コーヒーはね、3回に分けて飲むと良いんです。1回目は淹れたての熱い時。2回目は少し冷めてしっかりと味わえる時。3回目は冷めてきた時。冷めても本当に美味しいコーヒーは、しっかりと焙煎されている、美味しいコーヒー。これってなんだか恋みたいだと思いませんか?」
まだ僕は口にしていないけれど、きっと3回目でも、いや何度でも「美味しい」って言うんだろうなって、香り良い湯気の立ち上る中でそう思ったんだ。
きみの仕事が終わるのを待っている僕は、そんな事を思っていたんだ。
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