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書評 242 「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」

タイトルからは左傾(戦争廃絶)や右傾(国粋主義)の印象も受けるが、全く違う。日清戦争から太平洋戦争までの日本が戦った戦争を、歴史学の題材として紐解いている。どの様な時代背景で、開戦の意思決定はいかに為されたのかを史料を挙げながら解説。現在の日本人の常識になっている様な事が、実は歴史の誤解であることがいくつも出てくる。自分は松岡洋右についての思い込みを大きく変えられた。

歴史好きの優秀な高校生への東大院教授による特別講義の講義録で、学術書と異なって大変読み易い。挿入図も手書きのものが大半で、あたかも講義の板書のようで面白い。

薩長の政治家、あるいは軍閥によって強引に進められた戦争と割り切れるものではなく、多くの日本人が扇動されたと画一的に押し込めるのも不適。地政学的な必然であったり、日本人の教育レベルや対外情報への感度など、現在の感覚で見ては理解できない事も分かる。

史学の価値を再認識する一冊。


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