
Photo by
kohey1212y
書評 60 「おかあさん牛からのおくりもの」
絵本ですが、大人の読み物としても十分通じます。
北海道、道北の酪農業を紹介しています。一部、酪農からつながる範囲で畜産にも。動物を収入を得るための手段とする。そのために、必要なことを綴る。人工授精で子牛を産ませる。高齢をなれば処分される。搾乳には機械的作業が生じる。牧場を大型化すれば余計にそうなる。
ともすれば、読み手の感情を刺激することを懸念するがために「悲しいことではないんだよ」といった表現が使われる内容だけれど、作者は淡々と事実を書き連ねていく。
そして、絵がまた素晴らしい。柔らかいタッチでありながらデフォルメが無くて、写実的でないのに現実描写に長けた絵たち。牛の細かなところが写真を見るよりもよく捉えている。
仕事や職業を子供たちに示す本とは本書の形が正しいのかもしれません。現実を正確に伝える。写真ではリアリティが重すぎる感を避けながら、文と共に伝えてくれる絵。柔らかくも内容の重い一冊。
https://shopping.hokkaido-np.co.jp/book/products/detail.php?product_id=504