明るい夜に出かけて 感想

 今回読ませて頂いたのは、佐藤多佳子先生による「明るい夜に出かけて」です。
 大筋のストーリーとしましては、ある事件がもとで他人との接触を拒むようになったラジオ好きの主人公"富山"と、同じくラジオ好きの変人女子高生"佐古田"、同じくラジオ好きの旧友"永山"と、ネットで歌い手として活動している"鹿沢"達が、コンビニを中心として繰り広げる物語です。

 文章は、主人公の冨山視点で語られます。全体的に口語体で、かなり砕けた文章です。地の文も存在しますが、その地の文も富山視点の語りを含めた文章ですので、堅い文章が好きな方は少し戸惑うかもしれません。

 冒頭でも述べた通り、ラジオの存在がかなり色濃く物語を彩ってます。僕はラジオをこれまで全くと言っていいほど聴いてこなかったので、初めは?マークの連続でしたが、そこは丁寧な解説ですんなりと入ってきます。また、主人公を取り巻く存在が、色んな方面におけるオタクなので、いわゆるボーカロイドだったり、アニメキャラだったりの話題がちょくちょく入り込んできます。そう言った意味でも、サブカルチャー好きな人にはニヤッとできる描写が多いでしょう。コンビニバイトの事情も細かく織り込んでいるため、コンビニの描写の仕方を知りたい!という人にもオススメ出来ます。

 夜に揺蕩う、色んな事情を背負った若者達。過去の過ち、失敗、憧れ、趣味……。そして、誰しもが一度は味わったことがあるかもしれない、色褪せた世界に生きる主人公。その世界を、主人公の周りの人物が丁寧に、時には荒っぽく復元させていく。

 読んだ後にほっこりとし、そしてラジオ愛が熱烈に感じられる、素晴らしい作品でした。

 

 


 

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