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「ごみ屋敷」とディオゲネス症候群

今日はまた、m3(エムスリー)で見つけた医療ニュースをご紹介します。この記事は東京都健康長寿医療センター研究所が、「ごみ屋敷」に住む高齢者について調べた結果を発表した、というものでした。

たぶん、m3の会員でないと読めないと思いますが、一応リンクを貼ります。

記事によるとごみ屋敷化する高齢者には以下の特徴がありました。

✔️独居
✔️認知機能低下
✔️身体機能の衰えあり
✔️適切な支援がない

…まぁ、当たり前と言えば当たり前なのですが。

そしてらの生命予後が不良であるということは以前から言われていたのですが、「とりわけ介入から1年以内の死亡率が高い」ということが明らかになったということです。

少し詳しく説明します。

「ごみ屋敷」に住む高齢者

「ごみ屋敷」は時々ニュースやドキュメンタリー番組などで紹介されますが、だいたいは高齢者でありベランダや窓からあふれ出すようなごみの映像は強烈な印象があると思います。

興味深い共通点(傾向)があります。上記に挙げた4つのポイントもそうなのですが、見かねた近所や役所の人が訪れても介入を拒否することが多い、ということです。また無理に片付けても、すぐにまた元に戻ってしまいます。

確かに認知症があることはほぼ間違いないと思うのですが、独居の認知症の方で話したことをすぐに忘れてしまう人でも、部屋が綺麗な人もめずらしくありません。

ディオゲネス症候群とは?

「ディオゲネス症候群」という言葉、ご存知でしたか?実は私は初めて知りました。今回私が見た記事では、「ディオゲネス症候群(いわゆるごみ屋敷症候群)」と表現されていたので両者は同じなのかと思ったのですが、調べてみると全く同じ意味ではないようです。

同じく医療系ニュースサイトの「Medical Tribune」でこんな記事をみつけました。

こちらにはディオゲネス症候群の語源が載っており、古代ギリシャの哲学者の名前が由来になっているようです。

記事によるとディオゲネスは「必要なものが少ないほど神に近い」という思想を持ち、樽(たる)の中に住んでいたことから「樽のディオゲネス」とも呼ばれていたそうです…まぁ、ようするに変わった人です。

アレクサンドロス大王(アレクサンダー大王)がディオゲネスの樽の住まいを訪れて「何か欲しい物はないか」と尋ねたのに対し、「何も欲しい物はないが、日が当たるようにそこをどいてくれ」と返したエピソードも書いてありました。これはどこかで聞いたことがある気がしました。

「必要なものが少ないほど神に近い」というディオゲネスに対して、ごみが捨てられないごみ屋敷の住人ではある意味逆だと思うのですが、どうやら「孤独で不潔な生活をする、自らの体の状態への配慮がない、外的援助を拒む」といった特徴を指すようです。

ごみ屋敷化の原因は?

もともと片付けが苦手な方はいます。よく発達障害の方は片付けが苦手だと言われますが、性格もあると思います。しかし、悪臭を放っても虫がわいても片付けず、家からごみがあふれるまで放っておく人は、普通はいないのではないでしょうか。

ごみ屋敷の高齢者も、昔からそうだった、という人はいません。冒頭にお書きした4つの特徴をもう一度見てみましょう。

✔️独居
✔️認知機能低下
✔️身体機能の衰えあり
✔️適切な支援がない

これらの条件が今回の調査で明らかになったということですが、これらの条件に当てはまっても、ごみ屋敷ではない人もたくさんいます。

また、綺麗にしたくても身体が不自由だったり具合が悪くて出来ない、ただ支援が足りないという人であれば、行政や介護サービスに繋がれば部屋は綺麗になるでしょう。

問題はまさに「ディオゲネス症候群」の人たち。不潔にしていても全く気にならない、援助を拒む、という方ではないでしょうか。私はこの「ディオゲネス症候群」の高齢者も背景にある疾患(問題)はひとつではないと考えています。

おそらく前側頭葉型認知症(ピック病)、妄想を伴うレビー小体病、アパシーを伴ったアルツハイマー型認知症、もともとADHDやうつ病だった人が認知症を発症した場合などが含まれると思います。

ごみ屋敷の高齢者の「治療」は?

ごみ屋敷に住む人を薬で治療出来ないか。これは以前から試みられていますが、あまりうまくいかないようです。まず援助を拒否する人は薬も飲まないでしょう。また、薬はSSRIや抗精神病薬が使われることだと思いますが、飲めたとしてもあまり有効とも言えません。

ごみ屋敷の高齢者の予後が悪いのは、自らの健康状態に無頓着であることが多く、まず自ら病院には行かないでしょう。このような方が健康に気を付けてしっかりご飯を食べていることは少ないので、多くは偏った食事や傷んだ食べ物も食べていると思います。飲水量が少ないと脱水や熱中症のリスクもありそうです。

良い方法はないですが、家族が一緒に住むことでごみ屋敷ではなくなり、栄養状態も改善し体調が良くなった方はいました。有効な方法のひとつかもしれませんが、同居はなかなか難しいことが多いと思います。

まとめ

「ごみ屋敷」とディオゲネス症候群についての記事を読み、内容を紹介させて頂くと共に考察や経験も含めお話させて頂きました。

ごみ屋敷には様々な根深い精神症状が関係しており、「これをすれば良くなる」という方法がありませんので周囲の根気良い関わりが必要になります。

最後までお読み頂き、有難うございました!

医療分野の記事を色々書いていますので、よかったら他の記事も是非読んでみて下さい。

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