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鎮痛剤はこころの痛みにも効くという話
今日は一昨日に引き続き、日経メディカルの、谷口先生の興味深い記事の紹介です。
頭痛や関節痛に用いられる痛み止めが、なんとこころの痛みにも効く、という話題です。ただこの話、実は数年前から有名なのでご存知の方もいらっしゃるかもしれないですね。
こころの痛みに効くとされる痛み止めはアセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)ですが、他のNSAIDsと呼ばれる鎮痛薬(ロキソニン、バファリンなど)にも効果を示唆する研究があるようで、後ほどご紹介します。
今日の記事は2~3分で読めます。
アセトアミノフェンとは?
アセトアミノフェン(=カロナール)は市販の風邪薬にも含まれる成分で最も安全と考えられている解熱鎮痛剤です。
がんの痛みをはじめ、感染症の発熱、頭痛、関節痛などにも幅広く用いられ、1週間ほど高熱が続くコロナウイルスの感染症でも医療現場で大活躍をしました。
1回の用量は、だいたい体重×10mgくらいが目安です(体重50kgなら500mg)。但し痛みや熱の強さで増減します。最大量は1回1000mg、だいたい5~6時間効果があることから続けて使う場合は6時間くらい空けます。1日の最大量は4000mgです。
腎臓にあまり負担をかけないので腎機能が落ちた高齢者でも使いやすいです。ただし肝臓に悪影響が出る場合があり、アルコールとの併用や最大量を使い続けることは推奨出来ません。
何故こころの痛みに効くのか
ここが興味深いところだと思います。簡単に言うと脳の身体の痛みを感じる部分と、社会的な痛み(他人に拒絶される苦痛)を感じる部分(dACC;背側前部帯状回)が同じで、アセトアミノフェンはこの部位の活性を低下させるというのです。
以下はこれに関する文献で、2003年に「Science」という雑誌に掲載されました。
そしてもうひとつ、2011年の報告。こちらは62人の患者さんをアセトアミノフェン群とプラセボ群に分け3週間薬を飲んでもらったところ実薬群では時間が経つに連れ苦痛な感情が軽減し、最終的に「有意差(P<0.005)をもって大きく差が開いた」とあります。
アセトアミノフェン以外の鎮痛剤は?
アセトアミノフェン以外の鎮痛剤、たとえばバファリンやロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs;「えぬせいず」と読みます)はこころの痛みに対して効果があるのでしょうか。
冒頭で少し書きましたが、やはり「効果あり」を示唆するレビューがあります。こちらは2014年にまとめられたもので、14の試験に関する10件の報告(参加者6,262例)を解析しています。
結果はプラセボと比較して抗炎症薬使用群では有意に抑うつ症状を低減しており、著者は「うつ病治療に抗炎症薬を使用する根拠の裏づけとなる」とまとめています。
NSAIDsとアセトアミノフェンは同じ解熱鎮痛剤でも作用機序が全く異なるので、NSAIDsにもアセトアミノフェンと同じ理由(背側前部帯状回への作用)でうつに効果があるのかどうかは分かりません。
NSAIDsは抑うつに関係があるとされる身体の「炎症」を抑えることで効果が発揮されるのではないか、という説もあります。
また、アセトアミノフェンの論文では「社会的な痛み(the pain of social rejection)」への効果として評価されており、NSAIDsのは「うつ(depressive symptoms)」と表現のニュアンスが若干異なっており、両者を同じと見なして良いかも疑問です。
いずれにしても興味深い内容であり、今後の評価が待たれます。
まとめ
いわゆる痛み止めが実は「こころの痛み」にも効くようだ、という研究を紹介しました。ただ、未だ薬の量と効果の関係など不明な点も多く、頓服で用いても効くのか?等もはっきり分かりません。またNSAIDsは副作用も無視出来ないため、日常の診療ではまだまだ使われることはないと思います。
ただ、どうしても治療法がなく苦しい想いをされている患者さんには使用を検討し得るのではないでしょうか。
最後までお読み頂き、有難うございました。
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