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心に送るエール

誰かの心に触れるときは
芽吹いたばかりの柔らかな葉に触れるように
丁寧に優しく包み込むこと。
それを心がけてきた。

ハッピーライフコーディネーターとして
身体や心に携わる仕事を20年してきた。
大変なこともいっぱい経験したが
楽しいことも嬉しいこともたくさんあった。

自分で仕事をはじめる。
その覚悟を決めて行動を起こした。
人より身体が丈夫ではないため、具合が悪い人の気持ちがよく理解できる!
そう思い今までの仕事を辞め
身体について勉強をはじめた。

経理や宣伝も、勉強に出張も
すべて自分一人で行動しなくてはならない。
責任重大だ。
あっという間に時間が過ぎる。
忙しいけど充実した日々が続いた。
はじめた頃は失敗もあり
毎日毎日一人反省会を開くのが日課だった。
少しずつ自分が思い描くセラピストに近づくように調整をし、
技術を向上させていく毎日。

生徒さんやお客さんは
年配の方から小学生までさまざまで
その日によってヨガだったり
アロマレッスンだったり
ボディケアだったり。
レッスンや施術後は必ず皆さん
「ありがとうございました」
と笑顔になり軽やかに帰っていく。
その姿を見ると私も元気になる嬉しい瞬間だ。
私にとって天職だ!と思うくらい楽しい仕事だった。

もともとは身体の勉強を主にしていた。
身体と心は繋がっている。そう思って心についても学びはじめた。

ヨガのレッスンやボディケアをするとき
お客さんの身体に触れる。
そして
カウンセリング時には心に触れる。

心がしんどいときは
背中が固くなっていることが多い。
身体がひんやりして呼吸も浅い。

ボディケアやアロマのレッスンをしていると
いろんな思いを話してくれる。
楽しい事も悲しい事も嬉しいことも。
心の動きを教えてくれる。

家族にも誰にも話せないことをポツリポツリと自分で確かめるように話し出す。
途中から泣いてしまう方がたくさんいた。
辛いこと。苦しいこと。悲しいこと。
これまでなんとか隠し堪えてきたものが溢れだし止まらない状態なのだろう。
すべて吐き出せるまでじっと見守っていた。

本当はきっと、自分の中で答えのようなものがあると思う。
でもそれが、悲しみや辛さで見えなくなっているように感じる。
それに気がつけるようにアドバイスをする。
再び歩き出せるように
その背中を優しく押すつもりで
ゆっくり語りかけてきた。

カウンセラーとしては失格かもしれないけれど
泣き止まない時は
何も言わずぎゅっとハグをして
背中をさすってしまう。
その時だけは
我が子を抱き締めるようにただ泣き止むのをまっていた。

しばらくすると、固くなっていた身体や心がゆるむからか
身体が暖かさを取り戻していく。
固さがとれたのを感じると、背中をポンポンと軽くたたいた。

苦しいことをよく話してくれたね。
話してくれた人達には、いつも伝えていた。
常に笑顔でいる人。キラキラと輝いている人。頑張っている人。お店を経営している人。子育て中の人。
それぞれが、端から見るだけではわからない深い悲しみや辛さを抱えながら生きていた。
そのことに、身体と心に触れることで気がついた。

たくさんたくさん泣いた後はみんな
清々しいのに、ちょっと恥ずかしそうな笑顔になる。
それを見て私も心から嬉しくなった。

つらいことを
大変だったことを話してくれて
ありがとう。
まだつらいかも知れないけれど
人は自分の中に治癒する力を持っているんだよ
時間がかかるかもしれないけれど、自分の力を信じて欲しいと伝える。

歯科衛生士の学生だった頃、
校長先生が言っていた言葉。
「患者さんは心が串刺しになっている状態、そのことを忘れないように」

ボディケアの先生が教えてくれた言葉。
「私たちはマッサージの機械ではありません。
お客さん一人一人症状が違うのだから丁寧に向き合ってください。そして症状が改善したからといって私たちが治したわけではなく、お客さんのもつ自然治癒力を高めるお手伝いをした、と思ってください」

どちらも、私が大切にしている言葉だ。
人との付き合い方にも当てはまると思う。

大勢の人を相手にするより
一人一人とゆっくり向き合う方が私には合っていて派手に経営はしていなかったけれど、多くの方と出会うことができた。
その出会いは、今も私の心の財産だ。
たくさんの生徒さんやお客さんと
話しふれ合うことで
いろんな考えや人生を知ることができた。

レッスンやカウンセリングを通して話をしてくれた方々がその後
「あれから上手くいきました!」
「元気が少しずつ出てきました」
「もうさっぱりしました」
と連絡をくれると嬉しくてよかったね、と笑顔になる。

「どんなにヘビーな内容を相談されても、同調や同情はしない。治してあげるって思わないこと。引きずられないこと。冷静に、でも、親身になって話を聞く。その人がまだわかっていない行きたい方向へ気づくようにアドバイスをする。カウンセリング後はその人の悩みはしっかり忘れる。その変わりその人が元気で笑顔でいることを想像してあげる。本来は僕らみたいな仕事がなくなるくらいにみんなが笑顔で過ごせる社会だといいんだけどね」
 私と同じカウンセリングの仕事を、長年やっている友達の言葉だが、私もまったく同じ思いでいる。

どんな悲しみも辛いことも乗り越えて行く力をたくさんの生徒さんやお客さんに
目の前で見せてもらい
そこから私も強さをもらった。
本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

固かった身体が柔らかくなると
心もほぐれるのだと思う。
新芽のような柔らかさを取り戻した心が
すくすくと伸びやかに、でも逞しく育っていく。
元気になった後ろ姿に愛情を込めて深々とお辞儀をして見送る。
この先の人生に
めいっぱいのエールを込めて。

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