27年目の手紙
私が「横山」になって27年目に突入した。
笑ったり泣いたり怒ったり喜んでいたら、もうこんなに月日が経ったのか!と驚いている。
「人生の半分以上一緒にいてくれて、本当にありがとう」と言いながら夫が手紙をくれたので「えー!嬉しい」と喜び、実は私も書いたのよ!机の上に置いてあるよ、と伝えた。
夫に手紙を渡すのは付き合っていたころからだから、手紙もかなりの量になっているはず。
以前、私が書いた手紙が夫の部屋から大量に出てきて恥ずかしくなり、少しこっそり手紙を捨てたら「捨てないでほしい」と悲しそうに夫に言われた。
手紙って自分の気持ちを正直に書く場所だと思っているので、なんだか恥ずかしい。
読んだら捨てていいよ!と言っていのに夫は捨てない!!っと言い、私や娘からもらった手紙を大切に保存している。
「子年の人は紙を貯めやすいみたいよ」と言ってみたら
「えー!!」
夫と娘が同時に声を上げた。
我が家には子年が二人もいる。それじゃ紙がたまるわけだっと納得した。
夫からいただいた手紙は、私が書いた内容にそっくりで思わず笑ってしまった。一緒にいる時間が長いから考えることも似てきたんだなぁっと二人の歴史を感じている。
それなのに、長く一緒に過ごしてきた、飽きたわっという気持ちにならなくて、いつもフレッシュな気持ちで夫と過ごせているのが不思議だ。
今も夫を見ると、キュンとときめく。
婚姻届けが受理されて27年。「この人をめちゃくちゃ愛していいのじゃ」と国からも認めてもらえれているのだから、思う存分夫を愛したいと思っている。
「いつも人と丁寧に向き合っていて、しっかりお礼を伝えたり謝ることができて見習おうって思ってた。尊敬している」
ずいぶん前に夫に言われたことがある。そんな風に私のことを見ていたのかと思ったのと同時に、嬉しくもなった。
夫は出会った頃は口まめではなくて、何を考えているのか解らない時が多かった。(後で聞いたら本当に何も考えていなかったのよ、と言っていて驚いた)
今はゆっくりだけど、しっかり気持ちを伝えてくれるので、意思疎通も楽になった。
「嫌なことは嫌だ、ダメなことはダメってしっかり言えるところを見習いたいし、尊敬している」と結婚した時に私が夫に言った言葉。
嫌だ!と言ったところで、どうせ私がやらなくちゃいけないんだよな、っていう環境にずっといたので、嫌もダメも言う気力がなかった。でもそれも克服した。
時間をかけてお互いの足りていなかった部分を学ぶことができたと思う。
せっかちな私と、のんびり屋さんな夫。
性格は似ていないのに、好きなこと苦手なものが似ている。
笑うポイントが同じとか。
若いころは喧嘩もよくしたし、ちんぷりかえって家出をしたことも多々ある。
それでも好きな気持ちが減ることはなかった。
気持ちをうまく伝えることができず、喧嘩になってしまうことはあったけれど、しっかり話し合って、理解し合って、必ず仲直りしていた。
結婚して10年間は新婚のように暮らし、娘が生まれて父親母親になったけれど、相変わらず夫のことは大好きで、しっかりしているところも、不安になるとおなかの調子が悪くなるところも、時々頑固なところも可愛く思っている。不器用で真っすぐで、とても繊細なところもあり、嘘がつけなくてすぐに顔に出てしまうところも大好きだ。
出会ってから30年近く夫のことを好きなんだなぁっと思うと感慨深い。
夫婦は離れている時間が多いほど良い。って聞いたことがあるけれど、私は夫と一緒にいるほうが面白い。
夫と一緒にいたら、困難なことも、つらいことも、笑い話にできる。というか、してきたのだ。まったくもってひどい話や悲しい出来事も、最後には二人で笑い話にしてしまう。
笑うって免疫力も上がるし、スッキリするし、元気が出るし、人類にとって最高の感情表現だなぁ!って思っている。
すっごく豪華な食事を食べに行くのも、一緒に作ったおにぎりをもって公園で食べるのも同じくらいに幸せだし、夫がいたら楽しい時間になる。
めんどくさいことも、小難しいことも、夫と一緒なら笑って楽勝でこなしていける。
そうやって面白い思い出を増やしてきて結婚してから27年目に入った。
今も、今日も、ただただ夫が大好きなのだ。
「一緒にいたらどこにいても、どんな時も面白くて笑っていられるのよ。いつもありがとう」
この前夫に言ってみたけれど、ちゃんと思いが伝わったのかは謎のままだ。
(なかなかニブイところも可愛い)
私が病気になって弱音ばかりはいて痛くて動けない時も、一生懸命に寄り添ってくれた。
もともと愚痴を言ったり悪口をいうような人ではなかったけれど、弱音を吐く私に嫌なことは一切言わないで、いろんなことを受け止めてくれた。
迷惑ばかりかけてごめんね。と伝えると
「迷惑って思ったこと一度もないよ。それより身体つらいよね」と言ってマッサージをしてくれた。
どんだけ優しいんだよ!と、今も変わらずに思っている。
幸せの沸点が低いですねって言われたことがあり、なるほど!と思っていたけれど、幸せを見つけることが上手いのかもしれないな、と思うようになった。
小さなことでも「嬉しいね!運がいいね!幸せだね!」と大騒ぎしている夫を見ているとほんわかした気持ちになる。
「母ちゃんと父ちゃんが出会ってくれてありがとう!生んで育ててくれてありがとう!仲良くしてくれて本当にありがとう」
そんな言葉を娘からいただき、思わず涙があふれそうになった。
リビングで家族でいろんな話をするのが日課になっていて
「父ちゃんはなんの本で泣いた?」と娘が聞くと、読んだ小説の話をしてくれた。
物語で誰かのために犠牲になって亡くなっていく人のことを思って泣けたという話を私もはじめて聞いて、まだまだ夫の知らない部分がたくさんあるんだな、と嬉しくなった。
そして「あんまり泣くことはなかったのに、りぃりが生まれてから涙もろくなったよ」と夫は照れたように笑っていた。
「父ちゃんは母ちゃんと一緒にいてどんな時が幸せ?」
という娘の質問に
「何気ない日常の会話をしているとき、すごく幸せって感じるよ」
夫や娘が楽しそうに笑っていて、こういう時間が私もとっても好きだって一緒に笑顔になる。
「なんかさぁいろいろあったのに、楽しいことしか思い出せないよ」
私が言うと
「俺も!」ってにっこり笑う夫が可愛くて、この人に出会えて幸せだなぁ、
年を重ねても夫の前ではずっと可愛い人でいたいなって思った。
20代の時も30代の時も40代の時も50代になった今の夫も、素敵なままの愛すべきダーリンなのだ。
夫であり親友であり兄妹でもあり、時々父親っぽくもあり、唯一私が甘えられる人。
人生で大好きと思える人と出会い、その人に好きになってもらえて、奇跡的に可愛い娘が生まれて、有難いな、感謝だなって心の底から思っている。
何か大きなことはできないけれど、夫や娘をこの先も笑顔にしていきたい!って鼻息は荒い。
結婚した日に一緒に役所に行ったこと、どんな夫婦になりたいか書き出したこと、ずっと昔の大切な記憶を思い出して二人で「年とったねぇ」と笑いあった。
夫が書いた手紙にも
私が書いた手紙にも
「いつもありがとう。これからも楽しい時間を過ごしていこうね。大好きです。
これからもよろしくね」
と、同じようなことが書いてあって笑顔になった。
この人生が終わるその瞬間まで夫と笑って過ごしていきたいなぁ。
まだまだたくさんの「ありがとう」や「大好き」を伝えていきたい。
来年もまたこの日に感謝の手紙を書けることを楽しみにしながら、一緒に過ごしていく時間を大切に過ごしていこうと思った。
最後まで読んでいただき
ありがとうございます。
心から感謝の気持ちを込めて。
横山小寿々