【レポ】堀口ミイナさん×丸山俊一さん「欲望の資本主義2」刊行記念イベント
7月22日(日)、下北沢本屋B&B(Book and Beer)でお二人の対談が行なわれました。
堀口ミイナさん(トルコお生まれ、パキスタンや日本でも過ごし、5ヶ国語を話し(!)三菱商事を退職してタレントをされている。実は早稲田で同学部同級生でお名前はかねがね友人から聞いていたのですが、初めてお目にかかりました。)
丸山俊一さん( @shunzzzz1 イベントで初めて知ったのですが、なんとあの「爆問学問」「日本のジレンマ」のプロデューサーをされていらっしゃいます。僕は就活生でNHKディレクターを受けた時、好きな番組を「爆問学問」と答えていたので、丸山さんにお会いできて嬉しかったです。)
※超余談ですがNHKディレクターの面接では「今の番組で何も観てますか?」と問われ、テレビを持っていなかったのに当時流行っていた「あまちゃん」が好きです、と背伸びした回答をしてしまったためか落選しました。
モデレーターは東洋経済新報社の笠間さんでした。冷静なファシリで全体が聴きやすかったです。
今回のイベントは「欲望の資本主義2」の刊行記念イベントということで「欲望の資本主義」TV番組プロデューサーの丸山さんと、上述の「日本のジレンマ」に出演されている堀口さん(政治経済学部卒)のお二人が、欲望、資本主義、心、カラダをキーワードに語り合ってくださいました。
▼イベントで印象的だった部分
※イベント中に議事録Tweetをしてたのでそれに沿ってご紹介しますね。
●まず冒頭、番組のオープニングVideoが流れてから
丸山さんのご説明では、番組の作り方として、解説委員みたいな人が難しい説明をするのではなく、バッキバキに持論を持ったマニア的な人の視点から資本主義を見つめ直す、という狙いがあったそうです。本の表紙にも出ているガブリエルさん「資本主義はShowに過ぎない」、コーエンさん「創造的であれ、さもなくば、死だ」、セドラチェクさん「資本主義に代替案はない」のそれぞれの言葉を聞くと、バッキバキな感じ伝わってきますよね。
少し話が逸れますが、何か対象を理解する時に、あえて極端な視点に立ってみてそこから見えることを考える、というのはビジネスシーンやクリエイティブシーンでもよく使われる手法だと思うので良いですよね。
個人的には番組ナレーターが相対性理論のやくしまるさんである時点で番組のユニークさを感じるものであります。
話は徐々に、資本主義の代名詞とも言えるかもしれない「GAFA」へ。※Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字。Alphabetではなく。
詳細は説明は割愛しつつ、GAFAが我々の生活に驚くほど浸透し、世界の経済、さらには政治にも(米大統領のフェイクニュース問題は記憶に新しい)非常に非常に大きな影響力を持っていることが分かると思います。
その事実はあるとして、それを「どう解釈するのか」という点で堀口さん・丸山さんの話し合いは熱くなっていきます。
GAFAのような「プラットフォーマー」を肯定的に捉え、彼らが熱心に働いてくれているおかげで生活が便利になったと言う堀口さん。(※以下、正確な議事録は取っていないので言葉尻が異なる場合があります。そのような趣旨の発言をされた、と読んでください※)
あまりに寡占状態が続くことに対して懸念も持つ方がいいのでは、という論調の丸山さん。(丸山さんは終始「対話」的な姿勢で話をされて、堀口さんのように若くエネルギッシュな方の視点も面白いし、一方で懸念したくなる人の気持ちも分かる、その上で我々はどうするか考えたい、という趣旨を再三再四おっしゃられていました)
◎個人的には、自分の思うことを躊躇いなくストレートに堂々と発言し熱い議論を呼び起こすミイナさん、「面白い視点ですね~」と受け止め異なる視点を探して保留しながら対話を進める丸山さん、冷静に論点を提示する笠間さん、という登壇者のバランスもおもしろポイントでした。
個人的には、プラットフォーマーは世の中を便利にしてくれて感謝している一方、もはやイチ企業・スタートアップを超えた存在、いわば松下幸之助さんの言葉を借りるなら「社会の公器」であり、その行動は健全に監視されながら、彼らの自浄能力を期待する、ということが重要なのだろうと感じました。
Facebookのザッカーバーグさんも2017年に企業のミッション(使命・存在意義)を変更し、「世界のつながりをより密に」としています。映画「ソーシャルネットワーク」でハーバード大のどの女の子が可愛いか選んでいくサービスから始まった頃とは大きな変化を遂げている、と言ってもいいかもしれませんね。
権力は「立法、行政、司法」そして「第4の権力=メディア」と言われますが、社会をより豊かに秩序を守っていくためには、みんながファーストインターフェースとして使っているメディア的な製品を持つGAFAの高い倫理観は必要に思います。
そしてさらに、彼らの一挙手一投足を今や僕たちもあらゆるメディアで見ることができ、その反響は瞬時に彼らの株価にも影響を与えるほどです。形を変えて、直接民主主義制のようなものが形成されているとも言えるのではと感じました。
★あと2つほどご紹介して終えようと思います
ここで少し、少し違った観点でのレポートをお伝えしますと
欲望の資本主義に出演されているバッキバキ哲学者ガブリエルさんという人物や彼が述べている主張を、どう捉えるか、という点です。
単にテキスト情報だけで彼の言っていることや彼の人物像を推し量ろうとすると「なにやら強いこと言っている、強そうな人やな~、難しそうやし、距離とっとこかしら~」となりがちかも、と思います。(https://toyokeizai.net/articles/-/228778)
しかし、番組途中で「まだ、ミックジャガー程にはなってないよ!ギャハハハハハ!」と笑う様子を見ると、なにやら彼の人間味を知り、「そうか、こういう人なんだ、ちょっと話でも聞いてみるか」となりやすいと思います。(※彼の主張に同意するかは別の問題であり、そもそも彼の主張を一旦受け止めることができるか、という話)
これは、よくワタシが様々な企業で組織開発のお手伝いをする時に「組織の成功循環モデル」(MIT教授、ダニエル・キム氏提唱)という考え方に則るのですが、それと似ています。(https://jinjibu.jp/keyword/detl/815/)
何か人が集まり組織で事を成していく時、回り道ではあるけれど、いきなり「行動の質」「結果の質」を求めるのではなく、まずは「関係の質(この人ってこういう人なんだ~、なんか気軽に話せそう~)」「思考の質(気軽に話してみたら、思っていること伝えられた、しかも同じような認識持っているんだ~)」
と、コミュニケーションのステップを踏んでいくと良さげだよ!と述べているモデルです。
いきなりガブリエルさんの思考や、こういう社会にすべき!という行動を押し付けられると引いちゃいますが、関係の質から入っていくことで、少なくともガブリエルさんとの「対話(判断を保留して、相手の言葉を受け止め、相手との間にアイディアが流れるような会話)」が生まれるのではないかなと思います。
最後の1つ!これがチャレンジングなお題だす…
お二人の対談を聞いていると、お二人とも少しずつ違った判断基準や価値観を(当然)お持ちだなと分かります。そしてそれは我々も、ガブリエルさんたちも一緒です。
人が多く集まっている社会・世界で、じゃあ皆でどういう社会創ろうか?とお題を投げると、当然のように利益が相反したり、あるいは逆にWin Winが生まれたりするものです。
GAFAは正義か悪者か、資本主義はクールかオワコンか、という二元論では到底片付けられない感覚が自分にはあります。ゼロサムではなく、グラデーションのイメージがあります。
「”社会”を、自分の身の回りか、世界か、どの範囲まで捉えるか」「実現したい社会は、自分の生きている間か、死んだ後もか、どの時間軸で捉えるか」どの視点に立脚するかによって大きく結論は変わってくると思います。
もちろん「自分が、世界を、後世まで、豊かにできる」とセカイ系的に思い込んでいる訳ではないのですが、でも先祖からもらった恩恵を少しでも後世に伝えたいと願う気持ちは(ちょぴっとずつ)芽生えていくものかと思います。
※「周りを幸せにしよう、なんて傲慢だ。自分が幸せになるから、周りも幸せにできる!」という論調は最近とても多く見かけますし、間違っているとも思いません。というかむしろ、誰かに正解があるとも思いません。
正解のない今、正解を出すことよりも、「対話」を通じて、お互いのことを知り、お互いが「”まぁお前にも苦労かけるし、俺も少しくらいガマンするよ、でも一緒に良い状態目指そうな”と言えるくらいの納得解」が重要なのかな~と感じています。
僕に出来ることはまず、今の組織開発ファシリテーターの仕事や演劇活動、その他もろもろの行動を通じて、もっと多くのところで「安心安全な対話」が生まれるようにすることだなぁ、実現したい社会は「そうした対話を通じて、お互いのオモロイところに笑いあって生きている状態」だなぁ、としみじみ感じて帰路につきましたとさ。
おしまい。
★「欲望の資本主義2」 僕もイベントで(まんまと?w)購入しましたので読まないと~。