年1000展アート巡りする男が選ぶ!2024年上半期に最も心動かされた現代アート10選
決めた。もうこれでいい!
いや、難しいのよ。あれもこれも、良いアートがたくさんあったから。
ぜひあなたの心を動かしたアートも、コメント欄で教えてください。
動画で見たい方はこちら。
1. 愛!草間彌生 「Every Day I Pray For Love」
オオタファインアーツ(東京・六本木)
https://www.otafinearts.com/ja/exhibitions/307-every-day-i-pray-for-love-yayoi-kusama/
これまでも草間さんのことスゴイっていうのはもちろん分かっているし、たくさん作品見てきたんだけれど。
それでもなお、あるいは90歳超えてもなお、我々を驚かせてくれる、感動させてくれる、そのエネルギーがとにかくすごいなと。
今回は言葉でメッセージが結構書かれている作品が多くて、それ今まであまり見たことない気がして。
愛についてだったり、彼女のそういう思いみたいなものがすごく伝わってくる、パワフルで大きな愛のある作品たち。
別の会場では版画展も見た。これも良かった。
草間彌生 版画展
Ota Fine Arts
https://www.otafinearts.com/ja/exhibitions/312-prints-yayoi-kusama/
色彩だったり、インパクトがあってとても惹かれる。
2.技術より発想!「contour map # -from the beginning-」森本絵利
ギャラリーヤマキファインアート(神戸)
https://gyfa.co.jp/exhibition/eri-morimoto%e3%80%80contour-map%e3%80%80-from-the-beginning.html
これ↑は神戸で見たもの。何だか、分かる?
紙を細かく帯状に切り、それを輪にして繋げてたもの。すごすぎる。
とはいえ、ただそれだけだったら「超絶技法」というのか、職人って感じで、私はそこに「クリエイティブ」はあまり感じない。
しかしこの森本さんはやっぱりアーティストだなと。一番の理由は、成果物の作品はもちろんだが、その「発想」自体が他の人にないユニークなものであること。
これなんて、チラシを細かく切って砂みたいになってる作品。しかも適当に切ってるんじゃなく、全部正方形になってる。
運よくギャラリーに作家の森本さんがいらっしゃって、実際に切るのを見せてくれた。帯状に束ねた紙を千切りみたいに切り、さらに横に切っていく。
子供の頃からなんか無意識にそういうのを楽しんで気持ちよくこう切ってたのだとか。
ふと、誰でも?子供の頃には「大人から見ると無意味な行動やこだわり」があったんじゃないか?と。あなたはどう?
実はこっちがメインの作品。CGみたいにも最初は思えたが、でもよく見るとやっぱり手で打った点というのはボコボコしてたりして。
しかも、ただなんとなく感覚で点を打ってるのではなく実は、設計図的なものがあるのだ。
自然、つまり森とかビーチの色を写真から分析した結果で、この色は何個、この色は何個と数を数えながらドットを打ってるのだとか。
できる・できないの前に、そんな発想ある?ビックリだ。
3.無意味の意味。「共棲の間合い -「確かさ」と共に生きるには-」酒井美穂子、折元立身、ほか
東京都渋谷公園通りギャラリー
https://inclusion-art.jp/archive/exhibition/2024/20240210-178.html
インタビュー
https://youtu.be/5BSmsIi2E1g
一見、ものすごい数のラーメンに圧巻!という感じ。しかし実はそれだけじゃない。日付が貼ってある。
食べた日付ではない。ラーメンはまだ袋に入ってるから。
酒井美穂子さんは知的障害や精神障害のある方の表現を応援する「やまなみ工房」で活動している。
強い執着を抱いているのが、このサッポロ1番醤油味。食べるわけじゃなく、親指でこすって音を立てたり、見つめているのだ。朝起きてから、夜眠るまでずっと。しかも、20年も。
無意味に思えるかもしれないが、なんか彼女にとってはすごく大切で重要な行為なんだろうなって、彼女のことを何も知らない私でも思えてくる。
そして周りの方、施設の方やご家族がそれを汲んで、毎日新しいラーメンに交換したものを集めて、日付を付け、こうして作品にしてるっていうこと。つまり、彼女のその自己表現(もしかしたらこれは彼女のコミュニケーション?)を「作品」にしている、彼女の表現を認めている、そういう環境があるっていうことが、素晴らしいなと。なんだかジンときた。
人って、誰か1人だけでも自分を認めてくれる人がいたら、それが生きる力になるよなと。
ところで。私が思う素敵なアートの条件はこうだ。
まずパッと見、何も知らずに見ても、わぁなんかすごいとか、何だこれ!とか、そういう心動かされるものがあること。
さらに説明を読んだり聞いたりすることで、さらに違う視点で、「え、そういうこと!?」とか驚きがあること。
もちろん前提として、その発想が他にない、とてもユニークなものであること。
酒井さんの作品も、まさにそういうところがある。
ちなみに私はサッポロ一番 塩ラーメンが、インスタントラーメンの中で一番好きだ。次は、うまかっちゃん。
そうそう、同じ展覧会にあった折元立身さんの作品もすごく感動した。
何が素晴らしいって。長くなるので詳しくは動画で。
4.映え!だけじゃない!「種子は語る」Thierry Ardouin
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭
https://www.kyotographie.jp/programs/2024/thierry-ardouin/
この日のアート巡り動画
https://youtu.be/FQThwwD8UbQ
KYOTOGRAPHIE。毎年楽しみにしている写真祭だ。二条城の薄暗い中に、たくさんの電球。正直、ひねくれ者の私は初見では「はいはい、映える感じね、これはウケるよね」みたいにちょっと思ってしまったのだが。
しかしこれよく見ると、中に種子が入ってる。それで一気にグッときた。
いやこんなに種子をじっくり見る機会ってある?
その多様さとか、美しさとか、強さ。そんなものを感じる空間だ。
種からは何だかその物語も感じられるような気がして。
しかしふと気づく。あれ?KYOTOGRAPHIEだよね?写真展だよね?
奥にありましたよ、写真作品も。
二条城にももちろん歴史があるけど、種も歴史があって、そしてこれからもっと歴史を作っていくのかな、なんてことを想像したり。
他に実は2展も、KYOTOGRAPHIEから2024年上半期のベスト15に選んだ。
それも素晴らしいので、動画を確認してほしい。
KYOTOGRAPHIEに毎年行って思うのは、「写真」と一言に言っても本当にいろんな表現あるなってこと。写真って「視点」であって、人がどこをどう見てるかってことですよね。フォトウォークというイベントを昔何度か開催したのだけど、同じ道を一緒に歩いても、人によって撮る写真が全然違うのが面白くて。
KYOTOGRAPHIEは、あるいはビビアン・サッセンの展覧会は、自分にない視点に触れられて、なんか私の脳の地図を広げてくれるようなそんな刺激があった。
5.考えさせられる。「横浜トリエンナーレ」ジョシュ・クライン、丹羽良徳、ほか
横浜美術館
https://www.yokohamatriennale.jp/2024/
この日のアート巡りと、AIと対話型鑑賞の動画
https://youtu.be/fpu7t5yqfTI
芸術祭と言えばこちら、横浜トリエンナーレのこの作品もやばかった。
まずはジョシュ・クラインの作品で、AIとかロボットなど技術の発達によって仕事がなくなった人っていうことみたい。
これは色々考えさせられるし、心動かされて、すごく面白かったので、前にVLOGではこの作品についてAIと対話型鑑賞してみたので、あとで見てみてほしい。
この作品見てあなたはどんなに感じる?
一方、横浜トリエンナーレではこれも良かった。
水溜まりAを水溜まりBへ移し替えている動画作品だ。しかも、口移しで。
他に丹羽さんの「自宅の鍵を複製して路上で配布する」もすごい発想だ。馬鹿げてる(褒め言葉)。
これが何を意味するのか。それは、鑑賞者が勝手に考えたらいいのかなと。
私は、情報や自分の頭の使い方、というところに思いを馳せた。誰でもググればサクッと情報が手に入る時代。記憶した知識・情報なんて大した価値がない。
それよりも情報をどう使うかだとか、一次情報を自分が生み出すとか、自分の頭で何をどう考えるかっていう部分に重要性が増している。
誰かの家の鍵を手に入れても、結局使えない。同じように、知識・情報を手に入れても、使えないじゃ意味がない。自分に必要な情報を取り、その情報を使うっていうところにちゃんと行ける人がどれだけいるのだろうか?
他にも丹羽さんの作品は、
「官邸前までゴミをかき集める」
「自分の所有物を街で購入する」
「イスタンブールで手持ちのお金がなくなるまでトルコリラとユーロの外貨両替を繰り返す」
など面白いものがたくさん。
さらに、別のアーティストのこれも良かったな、ちょっと不気味だけど。
同じ動画で、この作品についてAIと対話型鑑賞してます。
横浜といえば、BankART Life7というイベントのこの作品も面白かった。AIと対話型鑑賞してVLOG投稿したので見てほしい。
6.多才!浅野忠信 “GAPS IN THE FILM”
代官山蔦屋書店(東京)
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/art/39986-1348510417.html
さてこちらはうって変わって、俳優の浅野忠信さんの個展。彼、俳優だけじゃなくってミュージシャン、あるいはアーティストとしても活躍してるんですよね。
なんとも言えないユーモアが良い。絵としても、アメコミっぽい感じとかありつつ、ちゃんとアーティストとして「浅野忠信」色があるっていうか。
浅野さんはロックバンド活動も面白いし、ドラマ「SHOGUN」も素晴らしかったので、なんかますますファンになっちゃいますね。
7.ロック!「座る人 "Sit-in"」水戸部七絵
座る人「Sit-in」
アニエスベー ギャラリー ブティック(東京・青山)
https://www.agnesb.co.jp/campaign/40th/articles/34/
「People Have The Power」
DIESEL ART GALLERY(東京・渋谷)
https://www.diesel.co.jp/ja/art-gallery/nanae_mitobe/
「new nobility | 新貴族主義 光へ! 」水戸部七絵 + 野村和弘
Gallery21yo-j(東京・自由が丘)
https://www.tokyoartbeat.com/events/-/Nanae-Mitobe-Kazuhiro-Nomura-New-Nobility/8868-C0-CE/2024-06-06
ロック繋がり?というか音楽繋がりでこちらは水戸部七絵さん。
ロックスターやミュージシャンをモチーフにした作品を彼女は多く手掛ける彼女。私は2024年の上半期だけでももう3つも展覧会見ていた。
ディーゼルでの展覧会はすごくロックで素敵だったのと、アニエス・ベーでやっていた展覧会「座る人」が特に良かった。
彼女は豪快に手で油絵の具を厚塗りするっていうのがスタイルだが、ここでは絵画の域を超えてもう立体になっていたりして。
インパクトがすごいし、音楽とかアートの力っていうのをすごく感じるし。
さらにこちらは野村和弘さんとの2人展。
野村さんは、指輪リングをひたすらつげている作風、作品。一方で水戸部七絵さんの作品は顔とか体がバラバラになっていて。
繋がってるものとバラバラなものの対比が面白い。
まだVLOGにして詳細投稿できてないものもあるので、是非チャンネル登録して楽しみにしていてください。
8.その姿勢に感動!「Dear Future Person, 」久門剛史
京都市立芸術大学
https://www.kcua.ac.jp/20231216_akcua_hisakado/
この個展のアート巡り動画
https://youtu.be/mbKjSeTjoYM
この個展のアート巡り動画(2)
https://youtu.be/YlX6Ev5IaN4
ここにきて、もしかしたらこれが上半期1番だったかも?という個展。
京都市立芸術大とそのギャラリーが移転して初めての、こけら落としの展覧会。この学校出身の久門さんの個展がもう圧巻で。
あまりに良かったので、別日に開催されたアーティストトークを聞きにまた京都へ行って見てきたくらい。
大きな壁が投げ倒されていたり、床材が全部貼られてなくて剥がれていたり。「準備中?」みたいな状態だったのだけど、そういうのも含めて久門さんの演出だった。
後にペーパーを見て分かったが、母校への批判と、若手アーティスト、あるいは学生さんへの熱い思い、メッセージが込められた作品、展覧会だった。
普通に考えて、自分の母校のこけら落としの展覧会でその母校の批判をするっていうのはなかなか難しい。
例えば会社員が職場から「ボーナス払うから、あなたのインタビュー撮らせて」と言われたとして、そのインタビューで職場の悪口を言うのは無理だろう。
お仕事をもらえたら、相手に迎合するのが大人として普通よね、みたいな風になりそうなところだ。
しかし久門さんはアーティストとして「いやそうじゃないだろ」って思うことをきちんと作品、個展で表現。そしてそれを後輩たちに見せたっていうその姿勢が、ものすごくカッコ良い。
批判の内容を簡単に言うと、その新しいギャラリーがアーティストにはちょっと使いづらい設計になっていたこととか、個展開催にあたり色んな納期とかが遅れたり、色々重なったようだ。
けど文句というよりも、その出来事から、アーティスト、学生、若い人は、与えられたものとか既にあるものを疑ってかかって欲しい、ということの表現だった。
例えばこの作品は、白い紙の裏と表からただ光が当たっているだけの作品。
人影は私だ。自分の影をよく見ると、小さい光が見える。
紙の向こう側から小さい光が弱く当たっているが、こちら側からもっと強い大きな光が当てられているため、通常は見えない。
ところがここに立つと、こちら側からの強い光は遮られて影ができる。向こう側からの弱い小さな光が見えるようになるのだ。
つまり大きい声、大衆の声だけじゃなく、小さな声にも目を、耳を向けようよ、小さな声にこそ何か価値があるんじゃないか、ということを表現している作品だ。なんと言うシンプルで美しい表現だろう。しびれた。
ちなみに講演会の中で久門さんが、会場にいる時に学生さんたちから「すごく展覧会、作品が良かった」っていう話は聞けたが、「なんでこうなんだ」とか何か不満とか怒りをぶつけてくる学生がいなくてちょっと寂しかった、というようなことをおっしゃってた。そこで、講演会後の質問コーナーで私の疑問をぶつけてみた。
質問は2点。
1つは、ギャラリーが使いづらいことに怒りを感じたことについて、ではどんなギャラリーだったら良かったの?という話。
もう1つは、その使いづらいギャラリーをキッカケにこの展覧会が生まれたってことは、アイデアを生んでくれたギャラリーなのでは?と。つまり、使いづらいギャラリーは実は、良いギャラリーなんじゃないか?みたいな。
結果。会場がちょっと変な空気になった(笑)。まぁ良い。人と違う視点はクリエイティブだ。そう思いたい。
まぁでも久門さんはとても真摯に、すごく色々考えてくれ、あれこれ本音を聞けたので、個人的には良かった。
9.写真展?!shunsuke shiga “still life”
Roll | Yosuke Fujiki Van Gogh(東京・神楽坂)
https://yf-vg.com/roll/shunsukeshiga.html
何だかよくわかんない。壁には作品がないな?
なんて思ってたところ、床よく見るとなんかテカテカしてる部分がある。
四角い枠の中の一部ツヤツヤしてるところは、床の写真を床に貼り付けたものなのだ。ビックリ!
そうなると、赤いコーンは?
すぐ近くの床のシミが、そのコーンの中にもあった。それも写真だ。いやこれ面白かったな。
他にも、スニーカーをメルカリで購入したら実は偽物だった、って作品も。相手の外国人?にメールで脅されたり、その内容を作品化したもの。
匿名性、ものの真偽、あるいは物の価値とは?みたいなところを問う作品だ。面白い。
近々この日のアートめぐりをvlog公開予定。チャンネル登録してお待ちください。
10.ちょっとズレてる。「発生法──天地左右の裏表」豊嶋康子
東京都現代美術館(東京・清澄白河)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/
これ↑、何だと思います?
ジグソーパズルだ。びっくり。
通常とは違うつなげ方で、無理やり1本の線にしている。
豊嶋さんは、私たちの物の見方だったり社会の制度、あるいはルールや仕組みみたいなものをちょっと歪ませるというか、視点をずらしてくれるような、そんな作品が多い。
これもやばい。壁にそろばんが無限にあるっていう。そろばんって懐かしい。
私たちの物の見方ってついつい凝り固まってしまったり、「こうに決まってる」「こうであるべき」みたいになっちゃいがち。
しかしここに来ると、そろばん以外にも…。
色鉛筆だったり、いろんな作品が「えっ?」っていう、本来の意味を完全には壊していないがちょっとずれた感じがすごく面白くて。ワクワクする展覧会だった。
実は…、15個えらびました
いや、選びきれないよ。他にもたくさん良い作品があったし。
実は15展選んだんです。それは動画のほうで紹介してるのでぜひ。
2024年後半も色んなたくさんアートを見に行くので、Youtubeのチャンネル登録、インスタのフォローをして、一緒にアート巡りを楽しんでもらえると嬉しい。
あなたの2024年上半期のベストアートや、私の15個から気になったものなどを教えてもらえたら、それも楽しいな。
アート見まくっているけど、あまりそれを人と話す機会がなくて。アートを語るコミュニティやラジオ、作っちゃおうかな?