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アートは「視点」が面白い!「神戸六甲ミーツアート2024」ベスト5 (動画あり)

終わった。年1,000展アート巡りする私が毎年必ず行く芸術祭、神戸六甲ミーツアートが閉幕した。

アートと自然の調和、作品内容も充実しており、広範囲すぎる芸術祭と違ってまわりやすいのも良くて、お気に入りだ。
しかも2024年は過去最高?に人気作家が集まっているように思う。

過去最多の61組が参加した「神戸六甲ミーツアート2024」について、ここでは良かった作品ベスト
5という視点でまとめてみる。

動画で「神戸六甲ミーツアート2024」Vlogを見るならこちら

会期が終わり、もう二度と見られないので、動画でもその雰囲気を楽しんでほしい。

年1,000展のアート巡りの様子をYoutube配信している。チャンネル登録し、動画で気軽にたくさんのアートに触れてみては。

さて以下は「神戸六甲ミーツアート2024」ベスト5。順不同。順番はつけられなかった。

《Non Ribbon Art 昔といまを結ぶちょうちょ》のん

リボンアートを手がけたアーティスト「のん」さんとは、女優ののんさんだ。元・能年玲奈さんである。
事務所の退社に伴い、本名であるにも関わらず名前を使用できなくなるような干され方をして話題となったが、「のん」として女優だけでなく音楽活動や美術活動もしている。
そうか、朝ドラ「あまちゃん」はもう11年前なのだ。

正直、「芸能人の道楽かな」くらいに思って作品を見に行ったところ、自身のモチーフをしっかりもっており、確かに「アーティストの作品」だった。

ここ5年くらいリボンアートていうリボンのアートに打ち込んでて。こちらも新作のものになるんですけど、見る人によってどんどんそのアートが違うものになっていく。今回の展示のリボンアートに関しても 見え方が変容していく作品を目指しています

(1) 【アーティストインタビュー】のん【神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond】 - YouTube

リボンといえば「むすぶ」もの。会場であるROKKO森の音ミュージアムにはアンティーク・オルゴールが展示されており、何十年も前のオルゴールと新作アート、そこにいた人々が結ばれるよう。

ちょっと不気味で、オシャレで、セクシーだ。

《六甲おろさない》松田修

私は恥ずかしながら「六甲おろし」を曲名だと思ってた。実際そうなのだが、もともとの意味は六甲山系より吹き降ろす山風のこと。
それでこの作品は、逆に海側から山側へと風を送り、六甲おろしを「おろさない」ようにしている。

なぜか?

阪神地域には、このような地域格差の意識があるというのだ。

  • 山手=阪急沿線=高級住宅街

  • 海側(浜側)=阪神沿線=庶民の町

作家は言う。

「僕しかできないことを考えていたら、尼崎の体験であるとか、そういうことしかなかった。(中略)主に精神性ですかね。例えば何クソ根性とか皮肉っぽさ、茶化す感じですかね」
山の方から吹く風を、海のほう出身の僕がなんかこう、押し返すみたいな。一発ギャグ的な抵抗運動」

(1) 【アーティストインタビュー】松田 修【神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond】 - YouTube

説明がないと感情が動かないアートと違い、この作品はパッと見だけでもインパクトがあり、「六甲おろし」や「山手」「海側」を知らない私の興味を引く作品だった。その結果、このようにこの地域を知るきっかけになった。

《電球都市:神戸六甲景》村上郁

一瞬、不気味に感じたが、美しい作品だ。ノスタルジーを感じるユニークさもある。
電球の中に観光絵はがきを封じ込めている。六甲山や神戸、そして六甲山の開発に貢献したアーサー・ヘスケス・グルームの生まれ故郷イギリスのものだ。

作家はロンドン留学中、「今ロンドンでは電球がついてるけど、日本では消えてる頃かな」などと考えてインフラや繋がりを感じる想像した体験から、この作品のインスピレーションを得たという。
電球・電線・絵葉書を通じて、異なる国や時間を行き来できる、とてもユニークな作品だ。

現代ではインターネットが当たり前にあり、地理的な距離や、地域を分けることに、あまり意味を感じない。しかし世界では戦争が起きている。
同じ地球でつながってるのに、ネットでつながってるのに、心はつながらないのか。

《自分の顔も思い出せやしない》西野達

《自分の顔も思い出せやしない》西野達

今回、一番楽しみにしていた西野達さんの作品だ。
これまで、シンガポールにある本物のマーライオンを建築で覆って、ホテル内にマーライオンがいる状態にしたり、渋谷のハチ公を1日限定で部屋に入れた様子はTV「情熱大陸」で取り上げられるなど、驚きの作品を展開してきた。

そして今回の作品は…?
実際に行ってみると、白い建物。よく見るとこれ、発泡スチロールだ。

記憶の作品なんですよ。たぶん半世紀ぐらい前からあったお茶屋さんがあって、それを発砲スロールで再現するっていうようなアイデアなんですけど。思い出っていうのはよく「泡のように消える」とか言うんで。発泡スロー ルって泡でできてるじゃないですか。泡のような記憶を、発泡スロールで表現してるっていう

(1) 【アーティストインタビュー】西野 達【神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond】 - YouTube

やはり今回も大規模な作品だった。
泡でできた真っ白な茶屋、周りにほぼ何もないその風景に、いろんな想像が広がる。

私がふと思い出したのは、喫茶店やカフェではなく、子供の頃に通った駄菓子屋さんや文房具屋さん。おしゃれでもきれいでもない店に、小遣いをにぎりしめてよく通ったものだ。
今ではその代わりをコンビニが担っているのだろうけど、「昔、コンビニってのがあったよね」などと、コンビニがノスタルジーの対象となる日はくるのだろうか。

そして、実際この六甲の茶屋ではどんな生活があったのだろうか。

《Their Breathing》小畑亮平

私は人に捨てられたもの、それらは普段意識して見ない、見過ごされがちなもの。しかし作家はそれらに目を向け、鑑賞者の目を向けさせることで、感情に深く訴えかける作品を作る。

六甲山に落ちていたゴミ、それを形だけにした作品だ。そこには確かにそれを手にしていた人の存在が、そして数ヶ月前から数十年前まで時代を越えた「息づかい」が感じられる。

作家はこう考える。

「美しいものを意識して作り上げようとしなくても、人間は無意識に美しさを生み出し続けているのではないか」

これもとても興味深い。「無意識に生み出す美」。たとえばどんなものがあるだろうか。

現代アートは「視点」が面白い

《STORKS》URBAN KNIT(兼平翔太)

いやぁ、明日になったらベスト5は違う作品になっているかもしれない。他にも素敵な作品がたくさんあった。けど長くなるのでひとまずこの5つにとどめておく。

…と言いつつ例えばこれは、コウノトリが風と共に舞い降りる様を表現している。かつて兵庫県全域でみられたコウノトリは、県鳥にも指定されているが、絶滅したという。
動画でぜひ、作品の動きも見てほしい。

他にも布施琳太郎、さわひらき、宮永愛子など好きな作家さんの作品もあったし、過去に見たことのあるアイムヒアプロジェクトも素晴らしかった。
城戸みゆき、周逸喬、佐藤圭一なども良かった。

このように現代アートは「視点」が面白い。

ぜひYoutubeで、アーティストの視点と、あなたの視点の比較を楽しんでほしい。

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