見出し画像

父娘ゲンカの間に入った話~後編~

どうやら我が愛知県も緊急事態宣言の仲間入りを果たすようです。他にも栃木県や関西方面の県など7府県が追加される模様です。ここが踏ん張りどころです!頑張りましょう!!#コロナ明けたらローストビーフ

こんにちは、コッシーです。


さてさて、無意味に長くなってしまった父娘ケンカシリーズですが、正真正銘今日の記事で完結でございます。長々と本当にすみませんでした。

前編中編を読んでいない方は先に読まれると話が分かりやすいかもです。

これまでのあらすじ。

うちの入居施設に見学に来られた父娘のご自宅に地域包括の命を受け訪問するも転倒による腰の痛みから起き上がれず救急車を呼ぶことに。転倒原因が娘さんに押されたことによることから地域包括は早めに二人を離した方が良いと言われます。そして地域包括から再度依頼をされた僕は再びお二人の自宅へ向かうのだった。果たしてお父さんは入居するのか!?コッシーを地域統括責任者になれるのか!?


救急車を手配した日から二日後に再びご自宅を訪問しました。地域包括はすぐにでも入居を進めたいと言っていましたが、僕の気持ちでは半々くらいでした。

お二人の状況を考えると一先ずうちへ入居してお互いに距離を取った方が良いように思えます。ただお父さん本人が納得しないままうちへ入居したとしてもおそらくすぐに家に帰ると言われる可能性が高いと思います。うちに帰るという人に対して引き留める権限も強制力も僕らにはありません。

だとすると、入居したもののすぐに帰宅してしまうのでは全く意味がないどころか逆にお父さんのフラストレーションを溜めるだけで状況はさらに悪化するような気がします。

うちへの入居はあくまでもお父さん本人が納得しないと進めるべきではないと僕は考えていました。


ご自宅に行くと娘さんが出迎えてくれました。先ずは娘さんに話を伺いました。

娘さんの状態は僕が思っているよりも深刻でした。娘さんは自分のせいで父親が怪我をした罪悪感とそれでも父親の顔を見るとこみ上げてくる怒りの両方の感情に苛まれており、お父さんと一緒に生活するのが本当に辛いと言われていました。

「もし父がこのままこの家で暮らすと言うのなら私たちが出ていくつもりです。」

3カ月の赤ちゃんがいるにも関わらずこんな風に言えちゃうのは相当追い込まれていると思います。逆に赤ちゃんがいるからこそそんな気持ちになっているのだと思います。

娘さんの気持ちを聞いて、お父さんを入居させる気持ちが半々だったのが、9:1くらいで入居させる気に変わりました。じゃないと娘さんが潰れてしまうかもしれません。


娘さんにお父さんと二人でお話をさせてくださいと伝えて、お父さんのお部屋に行きました。

「こんにちは。○○さん。コッシーです。腰の具合はどうですか?」

「先日はご迷惑をかけて申し訳なかったです。今はもう平気です。」

救急車で運ばれるほどの腰の痛みでしたが、大分良くなったみたいです。腰の話から世間話を少ししたあと本題に入りました。

「○○さん、僕としては娘さんと今は距離を取られた方が良いと思います。うちはいつでも入居できますが、○○さんはどうお考えですか?」

そう聞くとお父さんは黙り込み考えるように俯きました。しばらく沈黙があったあとお父さんが口を開きました。

「私も娘とは距離を置いた方が良いと思います。しかしここは私の家です。出ていくならあっちの方でしょう」

どうやらお父さんもお父さんで娘さんに対して怒っているようで、特に先日押されて転倒した事をまだ引きずっているみたいでした。

娘さんと距離を置くことには納得しているものの、出ていくのは被害者の自分がではなく加害者の娘さんだという主張です。

押されて転倒し怪我をしたのは事実なため、そういう想いになってしまっても無理はありません。これはなかなか入居は難しいかなぁ…と思った時、ふとベッドサイドの写真立てが視界に入りました。

写真にはお孫さんを抱いた笑顔のお父さんが写っていました。そして写真には1枚のメモが貼ってあります。

『○○ちゃんのために絶対禁煙する!』

それを見た時、今はボタンが掛け違えているだけで本当はお互いを大切に想いあっているのではないかと思いました。

本当に憎いと思っている相手の子供にあんなに優しい笑顔は絶対に出来ません。

だとしたら、やっぱり今は距離を置くべきです。ここは地域統括責任者の僕の腕の見せ所だと思いました。#地域統括責任者って何?


「○○さん、今はおタバコ吸われていますか?」

「いや、今はやめています」

「それは何故ですか?」

「……孫のためです」

「素晴らしいと思います。お孫さんのためとはいえ、禁煙されるのはなかなか出来ることではないと思います。

○○さん、お孫さんはまだ生後3ヶ月です。今環境を変えるのはお孫さんにとってあまりよろしくないと思います。お孫さんにとっては慣れたこの家で穏やかに過ごすのが1番なのではないでしょうか。

どうですか。お孫さんのためにも一旦うちにご入居されませんか?」

お孫さんをダシに使うのは本当にずるいと思いましたし、お父さんは絶対に困ると分かっていましたが、お父さんを入居させる他に良い案が思いつきませんでした。地域統括責任者失格です。#だから地域統括責任者って何?


答えに困っているのか、それとも答えは分かっているけど言えないのか、お父さんは口を開こうとしません。

「お孫さんが落ち着くまでの1年いや半年で良いです。とりあえずうちに行きましょう。大丈夫です。僕に任せてください」

そう伝えると、最後の一押しを待っていたのか「わかりました。半年そちらでお世話になります」と静かに答えられました。


そこからは怒涛の展開でした。すぐに地域包括に連絡して本人が入居を承諾した旨を伝え、娘さんといつ入居可能かの打合せをして、本人に入居日を確認して納得してもらい、もろもろの契約などをして、1月12日に無事ご入居されました。

まだ1日しか経っていませんが、娘さんからは「どんな様子ですか?大丈夫ですか?何か必要な物ありますか?」と何度も連絡をもらっています。

お父さんも「娘から連絡はありますか?」と聞かれます。

やっぱり親子です。本当に憎しみ合っているわけではありません。とりあえず半年の入居ですが、その後延長するかもしれませんし家に帰るかもしれません。

どうなるかは誰にも分かりませんが、その時に父娘ケンカが無くなっていたのならこんなに素敵な事はないなぁと思う、地域統括責任者でした。


まとめる力の無さから三部作になってしまい申し訳ありません。全て読んでいただいた方に本当に感謝します。

ありがとうございました。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?