馬子にも衣装
普段現場では、みんなと同じように制服を着て仕事をしている
ごくたまに、社外での打ち合わせや会議などに出席するためにスーツにネクタイを着用することがある
そういう時はだいたいが緊張するような場が多くて、ネクタイを締める手につい力が入る
その日も、需要な会議がありスーツにネクタイを着用する日だった
施設の更衣室でネクタイを締めてスーツに身を纏い、「よし」と少し気合を入れて出かけようとしたその時、ある入居者と会った
「○○さん、こんにちはー」
そう僕が声をかけるとその入居者はチラっと僕を見てすぐに目を逸らし、「どうも…」と小さい声で言った
どうやら見慣れないスーツ姿の男性が僕と気付いていないようだ
「○○さん!コッシーですよ!」
再び僕が声をかえると入居者はマジマジと僕の顔を見る
急にパっと表情が明るくなり、「なんだコッシーさんかね!誰かと思ったわ!」といつもの調子で話出す
程なくして他の入居者も集まってくる
スーツ姿の僕に怪訝そうな顔を見せるもすぐに僕だと分かるとみんな笑顔になる
「似合ってるね!」「よっ!いい男!」「カッコいいよ!」
入居者たちから褒められさっきまでの緊張が嘘のようになくなる
軽い足取りへ会議へ向かう