〔小説〕朝起きたらアザラシになっていた その38 グレた俺と理解のある親父
※この話はフィクションです。実在する人物・団体名とは何ら関係ございません。100%作者の脳内妄想のみで構成されています。
朝起きたらアザラシになっていた俺は天井を見つめ、うとうとしながら思い出に浸る。
中高生時代のオレは反抗期なお年頃。なので少しグレていた。
母親は泣いて往復ビンタしたが、親父は、
「バイクで暴走なんてカッコいいじゃないか」
と理解を示し、なんこつ揚げ触った手でベトベトのビデオテープを差し出した。
バイクでの逃走シーンが有名な『大脱走』だった。
親父はご機嫌で発泡酒のんで語る。
「これを見て華麗な脱走してくれたまえ」
ん?脱走が前提?「牢屋は嫌です」言うと親父は。
「悪いことしないで暴走するほうが賢い!さすが!」
ん?どうやって?と聞けば
「いま、サダム・フセインがスカットミサイル飛ばしてるべ?」
はい?
「へば(そうなると)、その近辺に警察いねえべさ」
はあ?
「うんだば(だから)、そこはスピード違反にならねえ」
しぬよ!
「葬儀屋に電話して、おめえ死んでも大丈夫なようにした」
母親もにじり寄り。
「おかあさんね、あんたを生命保険に入れといたよ」
俺が大丈夫じゃねえぇぇ!!
「スカッドミサイル落ちた煙から飛び出したら仮面ライダーみたいでカッコイイのに」
残念そうにつぶやいて、なんこつ揚げを口に運ぶ。
「死ぬよ!死ぬよ!死ぬよ!!」
何度も連呼し、砂漠に行きとうないと訴えたら。
「へば(だったら)、ロシア」
はぁ?
「ロシア行って軍事パレード走らせてるところに暴走すべ」
はい?
「へば(そうなれば)、KGBに追いかけられて凄いよ。KGBに追いかけられるって、おめ(お前)とジェームズ・ボンドだけだ」
「おかあさんね。サウジアラビア王国とソビエト連邦にあんたの入国ビザ申請したよ」
死にとうない!!
必死に正座した俺は地を這いずって、詫びて詫びて詫びつくし、入国ビザも撤回してもらった。
その後、また素行不良で捕まった俺に対して両親は。
「ほとぼり冷めるまでアメリカ旅行してきなさい。ホテルも予約したよ。オーバールックホテルだと。」
「お母さんね、もう7泊8日を予約したから」
再び土下座しました。
最近ライトノベルことラノベに「追放系」の3文字を見かけるけど、やっぽこんな感じなのか?
つづく。