「年寄りは運転するな」は正しいのか
池袋での痛ましい暴走事故以来、立て続けに悲しい事故が報道されていますが、「高齢者に運転させるな!」という機運の高まりにちょっと疑問があるので書いてみます。
神戸新聞にこんな記事がありました。
車のペダル踏み間違い事故10年で6万件、450人死亡 若年層が最多
この記事によれば、全国では、10-20代の事故率のほうが、70代以上よりも高いといいます。もちろん各年代のドライバー数がわからない以上、若者の事故が一番多いとはいえません。しかし同じ理由で、老人の事故が一番多いともいえないはずです。
そもそも注目すべき、というか驚きなのは、この数字は「アクセルとブレーキを踏み間違えた」事故の統計だということです。なんと10年間に6万件も発生して、450人が死亡したといいます。平均して毎年45名、毎月約4名が「アクセルとブレーキの踏み間違え」で亡くなっていることがわかります。
たしかに、年代ごとの事故率の分布をみると、
20代以下:26.9%
30-60代:48.8%
70代以上:24.3%
となっており、若者と老人が「事故を起こしやすい」ことが見て取れます。しかし、中年層のドライバー数が多いであろうことを考えると、実際に事故を起こした人数では、老人の順位が下回る可能性は十分あると思います。
池袋の件以来、同種の事故が起きるとほぼ必ず年齢が報じられるようになって、そのほとんどが高齢者によるものです。同種の事故が様々な年代でコンスタントに引き起こされている事実に鑑みると、これって要は高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違い死亡事故をわざわざ抽出して報道しているんじゃないでしょうか。
こうした報道を見て「年寄りに運転させるな!」というのは少し短絡的なのではないか、と少しモヤモヤしていました。まぁ上述のとおり20代以下と70代以上が事故を「起こしやすい」のは統計から見て取れるので、この年代には運転をさせるなという議論には一定の価値があるかもしれません。
なお、神戸市の事故は60代ドライバーによるものでした。