アートブック・410(視点)プロジェクト〜イメージのアップサイクル〜
こんにちは、擬態デザイナーの小瀬古です。今回は新シリーズのアートブック、410(視点)について書こうと思います。この視点というモチーフはメタな話を含んで厄介で、なるべく平易に書いてみました。
コンセプト
イメージのアップサイクル
410(視点)はイメージのアップサイクルをテーマにしたアートブックマガジンです。イメージのアップサイクルとは、素材にならない視覚的な要素を新たなイメージに生まれ変わらせるデザインプロセスです。キズやヨゴレといった素材のマイナス要因を再利用する手法で、物質ではなく視覚的要素におけるアップサイクルとして、この造語を定義しました。詳しくは創刊号の内容を交えながら紹介したいと思います。
創刊号のテーマ
京都のものづくりが舞台
創刊号では京都のものづくりにスポットライトを当てます。何度も使い込んでボロボロのハンマー、加工機の塗装の剥げや錆、長年雨風に晒された蔵の壁のしみや土埃など、、、工房にはこれまで素材化されてこなかった、多くのノイズが残ります。
これらのキズ汚れは職人さんの仕事の痕跡でもあり、実はノイズがストーリーを内包していることもあります。かつて私たちはこれをキズや汚れとして、写真や映像に収めることなく切り捨ててきました。
古くからものづくりが息づく京都を舞台に、工房のノイズを画像素材としてアップサイクルし、新たな発見を可視化するのが、創刊号のテーマです。
今回のリサーチにあたって、自作したデザイントイ「惑星発見器」を使いました。素材に当てると中央部分が惑星に見立てられるレンズです。工房の様々なノイズに惑星発見器を当て、惑星のイメージとして第二の人生を歩みます。
創刊号の特集
特集① モノづくりの惑星図鑑
創刊号の特集では、実際に京都の工房で惑星発見器を使ってその場所のテクスチャーを採集し、惑星図鑑に見立てました。工房のノイズも魅力的な惑星のデザインになります。今回はその図鑑の一部を紹介します。
くすおか義肢さんでは、石膏、インソール材、樹脂系、革など義肢義足に使われる多様な素材が惑星となりました。これらの掠れや傷が天体の表情に見立てられます。
精緻な技術をもって自社ブランドの自転車の制作を行うVIGOREさん。フレームを組み立てる機械や金属を加工する旋盤などが惑星に見立てられ、サイバーパンクな惑星がちらほら見えてきます。
このようにして、京都のものづくりに眠っている素材の原石を探し出し、光を当てていきます。それらを図鑑化し一望の元にします。
特集② 天文に擬態する素材|どっちが本物?
取材を進めるにつれ、惑星発見器で採集したワクセイの中に、実際の天体で似ているものがあるのでは?という疑問が出てきました。そこで天文学者・反保雄介氏のご協力で、採集したワクセイを鑑定していただきました。そして、いくつか本当に出てきました(!)。
上の画像では藍を混ぜたインソールと衛星イオに似ているため、横並びにして比較しています。さて、どちらが本物の衛星でしょう?さらに下のページでは、もう一つの組み合わせを提示します。
このようにして、京都のものづくりを天体の世界観に接続します。
410の役割
観察の補助輪
擬態デザインは身近な風景を新たな目線で捉えるきっかけとして位置付けており、観察のための補助輪の役割を担っています。擬態デザインに慣れてくると、身近なものが惑星に見えてきたりします。
新マガジン・410(視点)は京都の現地でフィールドワークしながら生まれる、ノンフィクションなプロジェクトです(gitaiはフィクション的)。実際にあるノイズをアップサイクルすることで、コンテンツや画像素材のあり方を再考するきっかけにしたいと考えています。
最後に
CAMPFIREにてクラウドファンディング中。応援お願いいたします!
イメージのアップサイクルによって生まれる観察の視点を、出版を通じて発信していきたいと考えています。本は新たな視点を提供し、未来の自身の考え方の種になる。観察の種を広げていく活動を続けていきたいと思っています。クラウドファンディングも、応援どうぞよろしくお願いいたします。
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