『協力ゲーム』という広すぎるジャンルを分類して考える
はじめに
今週こんなTweetをした。今日は協力ゲームの話。
ゲームの内容を説明するためによくジャンル名が使われる。
しかし、ジャンルが同じゲームでもゲームの内容(=価値観=何をすると褒められるゲームか?)は必ずしも同じではない。
その中でも”協力ゲーム”という言葉でくくられているジャンルはあまりにも広すぎる。私はこのジャンルには大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれに異なる遊ばれる理由や問題点を抱えていると考えている。
これを言語化して分類してそれぞれの特徴や課題をまとめておく事で(主に奉行問題等の)議論やゲームデザインの助けになればと思っています。
ご意見や「このジャンルも多くの異なる価値観を含んでいるのでは?」とうあればTwitterでもNoteでもコメントいただけると励みになります。
会議型
(定義)
一つの大きな問題に対して皆で議論して全体の合意のもとチームでの勝利を目指す。協力ゲームの中で最も大きい分類であり、特に説明が無い場合、このタイプの話である事が多い。
(特徴と作者の狙い)
難しい一つの問題を提示し、どうするべきかを議論させる。「難しい問題だったけど意見を出し合ったら解けた」という成功体験や(主に初心者に)「他の人ってこんなこと考えているんだな」と自分の頭の中になかった着眼点に気付かせる事ができるのは他の2つにはない特徴といえる。
(問題点)
奉行問題。つまり思考の速い人、あるいは単に人の意見を聞かない人の意見でゲームが進行してしまい、議論の楽しさが出ない場合のつまらなさがあげられる。
人の性格の部分は考えても仕方ないのでここではそれ以外の要因について考える。この問題の根っこにあるのは
1.ターゲットに対して難しい課題に作成せざるを得ない
2.(他のゲーム以上に)プレーヤーに積極性が必要である。
3.奉行の提案がゲーム攻略上良い提案の場合、咎めるメリットがゲーム攻略上ない
の3つにあると筆者は考えている。
(問題点1 そもそも課題が難しい)
議論させるには一人で解けてはならない。プレーヤーから複数の立案されるように複数の勝利条件(あるいは敗北条件)を設定したり、記憶する事で有利になる点を入れる事が多く他の2タイプと違い、単純なルール量や盤面の複雑度が難しくならざるを得ない部分がある。
このような課題を議論するうえで”議長”のようなまとめ役を用意するのは良い(攻略にも楽しむためにも必要な)動き方だといえる。作者視点で非常にわがままな話をすると議長にはぜひ立候補して欲しいが奉行は絶対に出てきてほしくない。この奉行と議長の差は「初心者に話を振る」といった配慮や状況をわかりやすく説明する能力の差、つまり権限ではなく力量(や心構え)の差である。もしこの奉行問題に完ぺきな回答というものが存在するとすれば、この力量の差を権限(≒ルール)に変換できる事ではあると思う。
それが思いつかない現状、できる事を少しずつやるしかない。例えば、プレーヤー間に知識の差をつけない事などが考えられる。例えば、ゲーム開始時にインストされないレベルの特殊カードがあると経験者と初プレイ者の間で情報の差ができてしまう。
①経験者がクリアの為に良かれと思ってどんなカードがあるかを小出しに情報提供する
②それを聞いた初プレイの人が説明が多くついていけない
③なんとなく言いなりになってしまう
という流れで小さな奉行問題が発生していると感じる事はある。
少し話はそれるがこの手のゲームでは山札からのドロー、ダイス等のランダムを決断の後に入れる構造がよく見られる。このような答えを確定させない構造も少しはゲームを良い方向に導いているように感じる。どの選択が正しいか最終的には運であることで、(ゲームの勝敗を相対的に重要視するプレーヤーが)悪くはないが最適でない行動にある程度許容しやすくなっている部分はあると思う。
(問題点2 積極性が必要なゲームである)
協力ゲームは悪く言えば、何もしないでも(優秀な同卓者によって)勝手に勝てるゲームである。故に他のゲーム以上に積極的にゲームに参加する必要がある。
奉行問題というが、奉行側だけを責めるわけにもいかない。”ルールが十分に理解できていない状態でゲームを始めてしまう(質問、確認をしない)”、”わからない事があっても聞かない”という消極的なプレーヤーにも問題はある。
よくある手段としてその人しかできない仕事を作るというものがある。簡単なもので言えば、手札は公開してはいけない、一瞬だけ記憶しておかなければならない情報が多くあり、それを分担することになるいったものである。 ただ、厳密なルールでは手札非公開(ただし情報は言い放題)というルールは面倒という理由で大抵手札オープンで遊ばれる状況を置く目にする。問題が起こる卓ではほんの少し有効かもしれないが、問題の起こらない卓で煩わしくなっている点で筆者はあまりこの対策は好きではない。
さらに進むと「情報の共有に制限をかければ解決する」という意見となる。個人的にはこの意見には反対の立場をとっている。理屈はわかるが、これは「初心者が上級者の頭の中を覗ける」という特徴とトレードオフの関係にあると思うからだ。(もちろん、考えた上でやるなら作者の意図として尊重する)
まぁ、人の性格を責めても仕方ない。サマリーを用意してインストをしやすく、また質問ができない消極的な人でも確認できるようにしておいた方が良い
(問題点3 攻略上の奉行を咎める理由)
よくある解決法としては裏切りもの(クリア失敗が勝利条件の人)を用意するがあげられる。裏切りものがいるとなれば、議論を1人の人に仕切らせる攻略上の危険性が出るからだ。
しかし問題点もある。初心者が裏切り者役になってしまった場合、負担が多すぎる事である。5人以上の大人数ゲームなら裏切り者を2人以上にして負担を緩和した方が良い。
(ゲーム例)
役割分担型
(定義)
小さなミニゲームが大量に出され、それを分担して解く。ボドゲではないが、リアル脱出ゲームの序盤(小謎が同時にたくさん出された状態)が最もイメージしやすいかもしれない。役割が最初から最後まで変わらないものもあれば、適宜変更したり、余裕のある人が他の課題を手助けできる場合もある。3つタイプの中では1番数が少ない。
(特徴)
言語、論理的思考、細かな操作(バランス、おはじき)、記憶力、閃き力等異なる能力が必要な複数の小さな課題を分担して解く。
個人に得手不得手があるのを利用し、「みんな違ってみんないいね」、「お互いがお互いを補い合えていたね」、「私の苦手な分野を〇〇酸が助けてくれた」という感想を狙いに行く意図でデザインされていると思われる。
(問題点)
失敗すると「それぞれ別のソロゲームを同じ机でやっているだけ」になりかねない。タスクを動かして”うまい人にコツを聞くように仕向ける”、”余裕がある人が助ける”、”お互いのタスク内に軽く関係性を持たせる”等、他の2タイプと違い一緒にやっている事を印象付ける必要がある
(ゲーム例)
意思疎通型
(定義)
ゲームを通して意思疎通に何らかの制限が付けられる。限られたコミュニケーション手段を用いて相手の知らない情報を伝える。
(特徴と作者の狙い)
相手が見れていない情報を限られたコミュニケーション手段の中でどのように伝えるか? 「察してくれ、な、俺が言いたい言外の意味、わかるだろ?」という期待と「わかってくれた」、「あー、伝わらないかぁ」という結果で感情を揺さぶる。(花火など、)発信側の事情が(ほぼ)わかるゲームだと「あ~、気持ちはわかるけどキラーパス過ぎない?」という意思の共有も行われることがある
他の2タイプに比べプレイ時間が短い傾向にある(概ねインスト抜きで30分級)。ゲームを繰り返すことで「この人(卓)の場合、こういう意図でやっているに違いない」という共通認識が形成され、「最初は通じ合えなかったけど、時間を経て、少し分かり合えた」というポジティブな感想で終えることができるからだろう
(問題点)
あまり問題点が離されている印象は無い。
しいていうなら”誰のせいでゲームオーバーになったか”が可視化されやすい所だろうか?
TheGameの場合、ゲームの内容上、正直誰がトラブルメーカーや救世主(※)になるかは運で決まるようになっているのがうまいと思う。
(今後の課題)
チーム戦の場合の話
話を協力ゲームだけでしてしまったが、チーム戦や正体隠匿(非公開のチーム戦)にもこれらの分類は当てはまる。
チーム戦はともかく、正体隠匿系はあまりプレイしないため、今回は触れなかった。ただ、チーム戦だから出る特徴や問題点の解決方法もあるとおもうので機会があったらまとめたい
意思疎通型 と 役割分担型はMECEではない。
ゲームジャンルはSteamのようにタグで管理すべきものだと思っているのでMECEでないこと自体には問題は無い。
ただ、”別々なタスク”をやっている者同士で”制限の意思疎通をするゲーム”という領域には可能性を感じているのでそこについては掘り下げたい(がまとまっていないし、いい加減話が長い)。
デジタルゲームの話になるがKeep taking and Nobody Explodes などを見るに可能性はあると思っている。成功判定が人なしでできる点でボドゲになるとしてもスマホとか使う形になる気はするけども。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?