「狂愛」
"Las locas por amor"
ー Ramón de Campoamor ー
-Te amaré, diosa Venus, si prefieres
que te ame mucho tiempo, y con cordura-.
Y respondió la diosa de Citeres:
-Prefiero, como todas las mujeres,
que me amen poco tiempo y con locura.
「熱烈な愛」
──── R.カンポアモール ────
愛を捧げよう、ヴィーナスよ
もしお前が誠実な愛を永遠に欲するならば
すると 愛の島の女神は答えた
"私も全ての女性と同じよ
短くてもいいから狂ったように愛して欲しいの"
(訳:小迫良成)
※ ※ ※ ※ ※
ホアキン・トゥリーナの歌曲集
《歌の形をした詩》の終曲、
「Las locas por amor (熱烈な愛)」。
カンポアモルの原詩では
"Las locas de amor"
という表題になっており
直訳するなら「愛の狂気」となる。
詩に記されている
"La diosa de Citeres"は
「シテーレスの女神」と読むが、
ここでいう「シテーレス」とは
ギリシャのペロポネソス半島の南
地中海とエーゲ海の境にある
キティラ島のこと。
このキティラ島は
泡から生まれたアプロディーテが
西風に吹かれて
この島の浜に寄せ上げられたという
伝説の島だったりする。
イタリア・フィレンツェの
ウフィツィ美術館に収蔵されている
ボッティチェッリの絵画
《ヴィーナスの誕生》には
西風が彼女に息を吹きかけている姿が
描かれているのを確認できる。
そして
この詩の最初に讃えられたヴィーナス。
ヴィーナスは
ローマ神話に描かれる女神であり、
ギリシャ神話に描かれている
女神アプロディーテとは
本来、異なる存在なのだが、
「美と愛を司る女神」として
事実上、同一に扱われている。
結果、
アプロディーテが寄せ上げられた
「誕生の島」であるキティラ島は、
ヴィーナス神話と結びつくことで
「ヴィーナスの島」
「愛の島」
と呼ばれるようになり、
詩や絵画、音楽の
格好の題材となってきた。
A.ヴァトーしかり、
C.ドビュッシーしかり、
そしてカンポアモルしかり・・・
チクルスの最後にふさわしく
快活で情熱的な曲だが、
それにしても
「不変の愛、永遠の愛」よりも
「一瞬の(あるいは一夜の)、
狂おしいほどの情熱的な愛」
を欲するとは、
さすがは
美と愛の女神だけのことはある。
・・・とはいえ、
この詩はカンポアモルの
"Doloras"に収められている詩。
"Doloras"とは
「哲学的な主題を含む
短い詩を集めたもの(=詩集)」。
・・・さて、
カンポアモルの本心やいかに・・・?
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