「呪い」
"Nunca olvida quien bien ama"
ー Ramón de Campoamor ー
Ya que este mundo abandono,
antes de dar cuenta a Dios,
aquí para entre los dos
mi confesión te diré:
-Con toda el alma perdono
hasta a los que siempre he odiado.
¡A ti, que tanto te he amado,
nunca te perdonaré!
臨終の際
神への懺悔の前に
二人きりで
お前に伝えたいことがある
これまで私が憎んできた者達は
全て心から許したが
これほど愛してきたお前だけは
決して許しはしない
(訳:小迫良成)
※ ※ ※ ※ ※
ホアキン・トゥリーナの歌曲集
《歌の形をした詩》の第二曲、
「Nunca olvida (忘れない)」。
歌曲集の中では
タイトルは"Nunca olvida"だが、
詩の作者であるラモン・デ・カンポアモル
(Ramón de Campoamor 1817-1901)の
発表した詩集《Doloras y Humoradas》
(「哲学詩と諧謔詩」とでも訳すべきか)
の中の該当詩では、
"Nunca olvida quien bien ama"
(最愛の人を忘れない)
というタイトルがつけられている。
・・・もっとも、詩の内容は
「忘れない」という言葉とは程遠く、
深くて濃い情念の発露なのだが・・・
※ ※ ※ ※ ※
「許すこと」は
平和な世界のバランスの中に
許す対象を埋没させてしまうこと。
許すことで
自然や世界を覆う
大きな「愛」(おそらくは神の愛)の中に
対象を委ねることになるのだろう。
あえて「許さぬ」ことで
遍在する愛の中に埋没させるのではなく
偏在した感情を固定し
同時に相手の感情も
その言葉で縛る・・・
・・・そう、
つまり
これは呪いの言葉。
「許さぬ」ことで、
そして、その言葉を
相手に投げかけることで、
未来永劫、
自分の存在を相手の心に刻みつけ、
同時に、自分自身も、
贖罪によって開かれる天国への道を
自らの意志で閉ざしてしまう・・・
その先にあるのは何なのだろうか?
愛するが故に
愛されるが故に
お互いに呪いの言葉をかけ
お互いを縛りあっていく
「愛憎」とは
よく言ったもの。
でも、この執着心こそが
人の人たる所以なのではあるまいか。
こういう愛の形、
・・・嫌いではない。
(というより、
ハッキリ好みだったりする!)
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