「女心の歌」攻略 02
ヴェルディのオペラ
『リゴレット』の劇中において
マントヴァ公爵によって歌われる
アリア「女心の歌」
このアリアの攻略法として
最初に頭に入れておかねばならぬのは以下の3点、
すなわち
1.歌っているのは貴族、ノービルであること。
2.歌う場面では、身分を偽り将校に変装していること。
3.既に(口説きの)ゲームの場に立っていること。
・・・となる。
1については昨日述べたが、
今日は2について述べてみようか。
この場面に至る伏線として
1幕での道化師リゴレットと
暗殺者スパラフチレの邂逅があり、
その際、暗殺の手段についても
ある程度、手の内は明かされている。
誰もが美人と認める流しの踊り子、
スパラフチレの妹であるマッダレーナを使い
標的を誘惑させてスパラフチレの家に誘い込み
そこで隙を狙って暗殺を行うという手口、
であるなら、3幕でマントヴァ公が
スパラフチレのあばら家を訪れたのは
偶然ではなく必然のなせる技となる。
つまり、
マッダレーナが街で評判の踊り子であることは
既にマントヴァ公に伝わっており、
いつもは町はずれのあばら家で
酔客の相手をしていることも、
マントヴァ公を呼び込む「撒き餌」として
周知されていると考えて良い。
敬虔なジルダを誘惑するのに
学生を装ったマントヴァ公は、
踊子で酒場女でもある
マッダレーナを口説くのに
「騎兵将校」という
いかにも商売女たちが騒ぎそうな
人物に扮装して現われるのだ。
ここで演者は
もう一度考える必要がある。
それは1幕ジルダとの二重唱では
マントヴァ公は「公爵」としてではなく
あくまで「貧乏学生」グアルティエールとして
最後まで振る舞い続けたということ。
それと同じく、ここ3幕においては
マントヴァ公はマッダレーナの前では
あくまできっぷの良い将校として振舞う必要がある。
たとえ「女心の歌」の歌唱中であっても、
この「将校としての振る舞い」を外してしまっては
はなはだ興醒めな演奏にしかならないであろう。
虚実を取り混ぜてこその演奏、
虚実を取り混ぜてこその演技なのだ。
それはオペラに限らず
「舞台芸術」の鉄則のひとつでもある。