「舞台の上のナイフ」考02
オペラの舞台で使うナイフ
「ナイフ」という名にまとめてるけれど、
いわゆる「短剣」「ダガー」の類。
サンマリノの怪しい店で見せてもらったのも
両刃のブレードが飛び出してくる
「ダガー」だった。
舞台小道具の中でも
刀剣類は結構好きな部類に入る。
藝大学部でのオペラ実習。
試験演目として私に与えられたのは
コシ・ファン・トゥッテの二重唱だったが、
どうもこれでは喰い足りない。
そこで、相方と示し合わせ
この課題は最速最短で終わらせて
「先生、まだ余力あるので
他の曲をやっていいですか?」と
トロヴァトーレの二幕
アズチェーナとマンリーコの場面を
半ば強引に実技試験で演じたのだが、
これもひとえに
「長剣をカッコ良く振り回したい!」
という、ただそれだけの理由から。
(ワハハ、今から思えば
よく先生達が許してくれたものだ!)
※ ※ ※ ※ ※
主催公演などでオペラをやったりすると
舞台で使う小道具の刀剣類も
どんどん増えてきたりする。
私が持っているトロヴァトーレ用の長剣は
とても舞台映えのするカッコいい剣だが
DENIX製の鉛素材なので重さが3キロ超、
この剣を振りかざした状態で
"Di quella pira"などを歌い始めると、
その重さで腕が震えてくるという代物。
リゴレットの舞台では
当初「スティレット」と呼ばれる
暗殺用の超細身の短剣を使っていたが
あまりに鋭くて危険だということで
再演の時には
幅広で武骨かつ安全な短剣に代わった。
他にも
「仮面舞踏会」で悪役三人組が
誓いを立てる時の3本の剣や
「カルメン」の決闘場面で使う
2本のナイフ、
そういった見た目怖そうな小道具が
公演を重ねるにつれ
我が家にどんどん溜まっていく・・・
・・・ううむ、
オペラ公演主催者の宿命とはいえ、
何かで間違って家宅捜査なぞされたら、
絶対「危ない奴」扱いされるだろうなあ・・・
(写真は主催公演「リゴレット」のチラシデザイン)