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下請け宅配業という奴隷制度①

xで【宅配便】と検索すると、
以下のような文章が見られます。

「時間指定してるのに荷物が来ない。
 ありえないんだけど」

「荷物が雨に濡れている。こっちは客なのに」

宅配業者への恨み言が、山のように、検索結果として出てきます。

この文章は、実際に宅配業務に携わり、
運営にも参加していた僕が、世間に

**「宅配下請け業務の実情」**

を知ってもらうために書きました。

例えば、大手ネットショップの荷物を1つ配達した場合、運送会社が受け取る金額は140円です。100円という契約もあり、メール便の集荷は20円で行われることもあります。その単価にも関わらず、お客様は高いプロフェッショナリズムを求めてきます。「要求するなら金をくれ」という気持ちでいっぱいでした。

1つ140円で配達を請け負うのは高いのでしょうか?
「1時間で10個配れば、時給1400円じゃん!」
なんて考える人がいたとしたら、
それは大きな間違いです。

実際にかかる経費や、時間を説明していきます。

まず、軽貨物業を開業する場合、車を用意する必要があります。新車を導入すると、その時点で失敗する確率が高くなります。50万円程度で壊れにくい軽自動車を購入するのが賢明です。そもそも、軽貨物業を始めないのが最良の選択かもしれませんが。

さて、車の準備ができ、開業届を出して無事にスタートを切ったとします。
では、どうやって仕事を見つけますか?
毎日安定した仕事とそれなりの荷物量を確保し、売上を上げることが目標です。
しかし、飛び込み営業でそのような仕事を取れるでしょうか?もちろん、取れません。
結局、大手の下請けに入ることになります。
この選択は必然的であり、
「下請けに入るか、廃業するか」という、
どちらを選んでも負ける、地獄の2択です。

大手運送会社に下請け業務を依頼しに行きます。
クロネコ、佐川、郵政、西濃、福通あたりが思い浮かびますが、西濃と福通は商業貨物がメインなので軽貨物では運べません。必然的にクロネコ、佐川、郵政に絞られます。

三社に絞り込み、「下請け業務をしたい」と営業をかけます。地域にもよりますが、多くの場合、二つ返事で仕事を受けられます。しかし、少し考えてみてください。

「運送会社がドル箱エリアを
 渡してくれると思いますか?」

もちろん、渡してくれません。
十中八九、任されるのはその営業所の

**「不採算エリア」**です。

**「不採算エリア」**とは、儲からないエリアの宅配を請け負うことです。移動距離が長く、荷物量の少ない地域が該当します。こういったエリアでは、1個140円の単価が重くのしかかります。
数をこなせない=売上が上がらないからです。

例えば、僕が担当していたエリアは、片道1時間かかる場所にありました。往復で2時間です。
2便目の荷物を営業所に取りに戻ることを強制されていたため、2往復で4時間が必要でした。
もちろん、この時間は売り上げが見込めません。
このことからも時給1400円が夢物語だということが解ります。

実際に1時間に10個の配達を達成するには、以下の条件が必要です。

1. 荷物はすでに積み終わっている
2. 配達先の住所が頭に入っている
(地図を開く必要がない)
3. 1件目の配達先まで5分以内である
4. すべての配達先が在宅している

これらの条件が揃わない限り、1時間に10件の配達は不可能です。地方で宅配をすれば、1日でこの現実を痛感します。

これは特殊なケースではありません。僕が通っていた営業所では、不採算ルートが半分以上でした。
北海道や過疎化が進んだ地域ではなく、人口10万以下の地方地域です。

もしあなたの家族や友人がこんな条件で働いていて、「時間通りに荷物が来ない!お金を払っているのに!」と言えるでしょうか?
あなたはその荷物を運ぶためにいくら支払いましたか?大手某ECサイトなら月額500円程度ではないでしょうか?

送料無料の通販サイトを選んでしまうのは解ります。でも、今一度、配達をしている人の気持ちに寄り添ってください。少しでも配達員の苦しみに共感出来るなら、「お金を払っているのに!」とか「プロ意識が無い!」なんて言わないであげてください。それ、相応の利益を配達員は享受してないことを思い出してください。

それが、利用者の持つべき、優しさだと思います。

多くの宅配関係者の犠牲のもとに、現在の宅配業が成り立っているのが事実ですから。


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