死なない理由

生きてるなんて、死なない理由が重なってるだけにしか過ぎないんだ。目眩のする帰り道で、そんなことをふと思った。

死なない理由がある。今週の土日は予定が埋まってるし、この世で一番大切で仕方ないのに実在しない人を思い浮かべた香水を作ったからそれを身にまとって眠りたい。

死なない理由しかない。こんなに苦痛なことあるか。死なない、死ねない、その繰り返しで。いつも、手首を台所の包丁で引き千切る妄想ばかりして手首を擦る。でも死ねない。

少しでも早く死ぬようにって背伸びするみたいに、ごてごて油マシマシの揚餃子とチャーハンを胃に詰め込むのが精一杯。それで、死んだ気でいる。死ぬ気でいる。

ほんとにね、死なない理由なんか、些細なことの積み重ね。明日、好きな人に会うからお風呂入らなきゃとか、スーパーの新商品のアイスが気になるからとか。そんなことばかりが気になって、死ねなかった。

死ぬの、怖いんだと思う。本音を言えば。だって、苦しくない死に方なんて、この世にはないはずだもの。「死」や「自殺」は、ファンタジーやメルヘンじゃない。美しく死ぬなんて、出来やしないのだって、私はとうにわかってた。

だから、死ぬって予定は後回しにしてる。今日はちょっと、ケーブルでも首に巻いて寝ちゃうかもしれないけど。

貴方の死なない理由も、いつか教えてね。


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