散歩の人 郊外の一戸建ての変化 本当にサステナブルな建物とは
ヒートアイランド
最近の散歩で気づいたことがある。
郊外の住宅街がヒートアイランド化している。
元々緑が多い多摩地区を散歩している私だが、夏場になって、野草やツタ類が猛威を奮う時期なのに、
「あれぇ、昔はチャドクガの葉を咀嚼する音がしたのに・・」
気づけば椿の林が消え、毎年カブトムシが飛んできたシンボルツリーがあるアパートが消え、目に眩しい建物に建て替えられている。
ここ10年ほど、古い大きな民家が壊されて、その後に庭のない一戸建てが建っている。
環境変化
庭も含めて木々、草花が減っている。
結果として、環境変化に強い外来種が増えている。
顕著な所で、
アゲハチョウは特定外来種のアカボシゴマダラになっている。
ウグイスは中国産の大きな声で鳴くガビチョウになっている。
小さな恐竜と言われるカナヘビが減っている。
ガマガエルが道路で轢かれているのを見なくなった。それだけ個体数が減っている。
近所を走っていたつがいのタヌキも見かけなくなった。
東京砂漠
東京都はビルの屋上緑化を推奨している。しかし、一戸建ての庭は緑化しろとは言わない、代わりに屋根に太陽光発電を付け蓄電地を設置しろと強制している。
それを地球温暖化対策としている。
一戸建ての変化
写真の新築は窓も小さく少ない。庭はすべてコンクリートの駐車場としている。断熱も効いてるしオシャレだが、全く土の見えない家だ。植栽がない。真夏は目に眩しい。
東京の田舎と言える多摩地区の家は庭も広く、大木もあり林みたいな庭が多かった。さらに畑も池もあったりした。
この庭(緑地)に多くの生物が生きていた。タヌキもアオダイショウもガマガエルもカナヘビもウグイスもやってくる。
また家の中にも色々な虫が入り込む。Gは嫌だけど、飛びグモなんかは可愛い。そんな生き物を紹介した本もある。
心の砂漠化
今の一戸建ては土の庭がない。ハウスメーカーとして、庭は無駄という判断なのだろう。
そこに住む人、年配者はせめてもと、プランターで花木を置いたりしている。しかしそれさえしない人も多い。
まるで、心も砂漠化しているように見える。それで満足なのだろうか、昭和の人間にとっては心配になる。
環境に優しい生活とは
完全空調の一戸建てに住み、庭は駐車場、コンクリートで固めた土地で、太陽光発電、EVカーに乗り、オーガニックな食事をする。
これがサステイナブルな生活だという。地域全体の環境にこれがベストなのだろうかと思う。
建築家の作る建物
この一戸建ての変化に気づいた流れで、仕事で過去何度か、お付き合いのある安藤忠雄さんの建築物を見直してみる。
安藤建築は建物はコンクリートで無機質だけど、俯瞰して全体を見ていると何故か木々と水と空などの自然を感じる。
コンクリートは環境に優しくないと言うが、元は石。
代表的な建築として直島の地中美術館がある。
2度ほど直島を訪れて、安藤さんの話を聞いてから、ベネッセハウスも含めて、じっくりと見学したことがあった。
意外と建築物は目立たない。周りの木々が育ちさらに自然と溶け込んでいくのだろう。
一方最近人気のある隅研吾さんの建築、木造の凝ったものが多い。
木を使うので環境に優しいと言われる。
しかし違和感がある。周りの自然に溶け込んでないと感じる。材質は木だけど建築物は絶対に自然のモノではない。
ここに大きな考え方の相違点があると気づく。
環境に優し建物とは、地域の自然をいかに巻き込んでいるかどうかで判断出来る。建物そのものがサステイナブルだけでは環境に優しいと言えない。
郊外の一戸建てと同じで、自分達だけが快適でサステイナブル。
「違うのでは?」
両者の比較 (これは個人の感想です)
材料 コンクリート(石) 木造(木) お互い自然物だ。
色 基本灰色なので目立たない 茶色の木材は目立つ
構造 単純 丸、四角 複雑、組み木 神社仏閣
再利用 する する どちらも持続可能だ。
優劣をつける気持ちはないが、どちらが環境に優しいかと考えると、私の考え方では、建造物は周りの木々、草花、生き物などの自然に浸食されていくほど環境に優しい。
建物本体だけが持続可能では自己満足の建築だと思う。
これは今回の散歩の流れで気づいた点だ。
海外の話を少し
2004年、ケンブリッジ大学で、空調機などを使わない建築の案(計画図)を幾つか見せてもらったが、まるでジブリの世界観だった。土と水と石と木々、風を利用する建築。自然の力を電気に変えず直接利用する思想。
当時、ITを使った省エネシステムを設計していたので、目から鱗が落ちるほど驚いた。
おしまい。