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【1000字書評】佐藤友亮『身体的生活 医師が教える身体感覚の高め方』

【概要】
 人間の身体感覚について、血液専門医の著者が西洋医学的知識と東洋的な感覚を統合させて説明する医学エッセイです。キーワードはチクセントミハイの「フロー理論」となんと「合気道」。前半部分はフロー理論とセルフイメージの重要性や「ゾーン」に入るための準備について、後半は著者の経歴と合気道から得た学びや気づきについて書かれています。豊富な実例や引用で、これから起こりうる様々な出来事に対応する術を教えてくれる良書です。

【感想】
 
感想として、まずチクセントミハイのフロー理論についてこれだけ平易に解説している本はそうないだろうと思いました。フローやゾーンの概念はネットでもすぐに知ることができますが、かんたんにフロー状態に入れる方法等誤解も多いです。それは著者をはじめ実はチクセントミハイも指摘していて(p.31)、それを踏まえて著者は「理想的な境地は、求めれば求めるほど遠ざかってしまう」と述べています。つまり、フローな状態は良いらしいから、そうなるように努力しよう!ではないわけです。

 本書でわたしが最も衝撃を受けたのは、自分の内面を変えていくということ。たとえとして、第一の矢は受けても「第二の矢は受けない」p.93という思考です。仏教の思想や、CBTの認知のゆがみにも通じる考え方だなと思いました。もちろん感情が動かされたり、動揺してしまう場面はたくさんあります。フロー状態に入るためには、ミスがあったとしても、平然としているメンタリティが必要なのだと感じました。

 わたしのフロー状態の原体験は、小学校のパソコン授業だったと思います。フロー状態の条件の一つに「時間がゆがむ(速く感じる)」というのがありますが、まさにそんな感じ。楽しすぎて、没頭していました。

 もしかしたら仕事もある種そうした部分があったのかもしれません。退職する数日間、引継ぎも終えて手持ち無沙汰にしている時間は、いつもの何倍にも感じました。働いていた時はフローだったのかわかりませんが、時間感覚はかなり速かったように感じます。

 ともかく本書を読んで、一度挫折したチクセントミハイの本に再チャレンジしてみようと思うようになりました。

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